ニッポン放送の「オールナイトニッポン」とTBSラジオの「JUNK」が、2大巨頭として君臨する深夜のAMラジオ。「オールナイトニッポン」ではナインティナインにオードリー、「JUNK」では爆笑問題やおぎやはぎなど、中堅~大御所の域に達するベテランお笑い芸人が中核を担っている。深夜ラジオでは、過激なトークや下ネタさえも受容する文化が何十年にもわたって育まれてきたが、ラジオを取り巻く環境が大きく変わった今、トークの内容が以前と比べ“マイルド化”している。その背景とは。
下ネタやドッキリも…“過激”だった過去の深夜ラジオ
かつて、深夜のAMラジオの王道は下ネタだった。70年代には「笑福亭鶴光のオールナイトニッポン」が過激なエロトークで絶大な支持を集め、同時間帯の占拠率90%をマークしたと言われる。また、80年代に深夜を席巻した「ビートたけしのオールナイトニッポン」も刺激的だった。中でも、語り継がれるのは、1982年放送の「札幌の女事件」。これは、当時既に結婚していたたけしが札幌で関係を持った女性を生放送中に登場させ、たけしとの一夜の様子を語らせるというものだ。
エロ方面以外にも、際どい放送は多々あった。たとえば、90年代前半に放送された「電気グルーヴのオールナイトニッポン」の「長嶋茂雄歓迎事件」。これは、石野卓球、ピエール瀧が仕事で新千歳空港に到着した際、「長嶋茂雄として迎える」ことにしてリスナーを集めたイタズラだ。「ようこそ長嶋監督」というプラカードなどを持つ巨人ファンに扮装した大勢のリスナーが空港に大挙したために、それを見た一般客が本当に長嶋が来ると勘違いして一時パニックになった。
パーソナリティが家族の話も…深夜ラジオの“毒”が抜けた現在
しかし近年、深夜のAMラジオでは、毒を可能な限り抜いた放送が目立つようになった。そして芸人のパーソナリティの中には、わが子に関するトークをする者も増えてきた。
そんな子煩悩な芸人パーソナリティの一人が、爆笑問題の田中裕二だ。独身時代は「爆笑問題カーボーイ」で、冴えない青春時代の話やお気に入りのアイドルの話ばかりしていた男も今や3児の父。最近では、「娘のワードセンスがすごい」というエピソードトークを頻繁に披露しており、その結果、独自の面白い造語ワードをリスナーから送ってもらう「知らないの?」と題した番組内コーナーもスタートしている。
昨年、紆余曲折の末にオールナイトニッポン約6年ぶりの復帰を果たしたナインティナインの矢部浩之も今では、青木裕子との間にできた2児にまつわる話をよくしている。かつてはリスナーから届いた性や恋愛にまつわる悩みに回答するコーナー「矢部浩之のどりちんクラブ」を担当していたが、最近まで世の中の「ファミリー」に関する疑問・質問に矢部が答える「矢部浩之のファミリー倶楽部」なるコーナーまで行っていた。
ほかにも、「メガネびいき」では、小木博明が頻繁に子どもと妻、義理の母にあたる森山良子に関する話題を出しているし、「オードリーのオールナイトニッポン」では、春日俊彰に娘が生まれたばかりということもあって、度々愛娘の成長に関するエピソードを話している。
太田出版