「役って、はかないもので。そこに役が際立ってくるといいっていう」
徳川慶喜から学んだもの、この役と出会ったことで僕自身が変わったこと。よく聞かれる質問ですけど、それはないです(笑)。学ぶこととか変わったことは。学べない人なんですよ、僕は。終わって思った、学ぶとかないなって。役ってそういうことじゃないと。若いときの方があったかもしれない。それも今考えると、そう思わせていたのかもしれない。何か納得してこれを学んだんだ!みたいに思いたかったのかと。でも今はない。役って、はかないもので。そこに役が際立ってくるといいっていう、ふとしたことだと思うんだよね。物語とか人物とかキャラクターは。あんまり思い入れてやっても僕はつまらない。役のキャラクターは普通に生きているわけで、自然なわけだから。そこに自分でこの役で学ぼう!と思うのも変な話で。たとえ慶喜のような偉人だったとしてもね。はかないものでいいんだよ。そんな感じ。そこで自分の人生と役を照らし合わせたりとかはないな。終わった。楽しかった。でも少し寂しい感じ。それでいいんじゃない?
ただ、学ぶとは違うけど、人としての慶喜さんは興味深い方ですよね。なぜあんなにみんなから慕われたのか。誤解を生んだり、戦を放り投げて帰ってきちゃって、本当に平和を願ってやったことなのか。忘れかけている古き良き時代の日本の心だったり、昔の人のたたずまいとか心掛けとか、慶喜の人生を演じ切ったからこそ惹かれるのかな。今後は、そんな慶喜の思いを告白するところもあるし、僕の最終日に撮った栄一との最後のシーンもいいシーンが撮れた。最後まで楽しんで見てください。