ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第109回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演男優賞 受賞インタビュー

撮影=山下隼

鈴木亮平

ロケ現場の規模を見て、俳優部への挑戦状だなと思いました(笑)

まずは、主演男優賞受賞のお気持ちをお聞かせください。

非常にありがたいのと同時に、ホッとしています。こういう時代だからこそ、希望を与えられて、医療従事者の方々を賛美する作品にしたいという理想はあっても、それを形にするためにはすごくセンシティブな作業がたくさんあり、プロデューサーや監督の方々は大変だったと思うんです。ですので、うれしいと同時にホッとしています。
今作で初チーフを担った松木彩監督には今までにないドラマを作ろうという気概が感じられて、みんなを引っ張っていってくれました。


医師としての説得力が素晴らしいという声が多数寄せられました。喜多見を演じられるときに意識したことは?

安心感です。自分が病院に行ったときなどに感じる、安心感を与えられるお医者さんになりたいと思いました。医療指導してくださった北里大学病院の方々に、最初にトリアージのやり方を見せていただいたとき、朗らかに接してくださったんです。どんな状況でもすごく柔らかくて、「こんにちは~。今、どんな状態ですか? じゃあ、また後で来ますね~」という感じで。そのときに「ああ、これがお医者さんだな」と思ったんです。この作品は医療従事者の方に贈るドラマでもあったので、皆さんに「そうそう、お医者さんってこんな感じ」と思ってもらえるようにしたいなと思いました。


喜多見の話し方はとても印象的でしたが、本物のお医者さんをヒントにしていたのですね。

そうですね。それから、松木監督と脚本家の黒岩勉さんにお会いしたときに、「この口調でいきたいです」とお伝えしたら、「とても柔らかい口調だけど、手と目線は常に動かしておいてください」と言われまして。手と目線の緊迫感と、口調のギャップ。そこが分かりやすいように編集をしてくださっているので、安心感がありつつ、緊迫感のある世界観になっていたのだと思います。


黒岩さんは喜多見に鈴木さんを当て書きされたそうですが、演じていて親和性は感じましたか?

えぇ(笑)。僕、「ですね」って言うんですよ。この口癖の一致は偶然らしいのですが、あるとき、「ですね」って言ったんです。自分で、“ああ、言ってる!”と気付いてからすごくやりやすくなりました(笑)。


鈴木さんはあれだけの難しいせりふを間違えずに言っていたと聞きましたが、どのようにして覚えていたのですか?

僕は、それが何かを理解しないと覚えられないんです。例えば、乳酸リンゲル液という薬剤があったら、それが何をするもので、どういう患者に与えるのか。生理食塩水とどう違うのかまで理解しないと名前が出てこないんですよ。勉強は大変でしたけど、そういうのを調べるのが結構好きなので、新しい台本を受け取ると「結構難しいのがいっぱいある!」と思いつつ、楽しかったです(笑)。現場に行くと(医療監修の)先生に聞けますしね。


現場では、医学書も読んでいたとか。

読んでいました(笑)。「京都ERポケットブック」というのがあって、お医者さんの中でも救急医しか読まないらしく、少しお高めなんですけど、個人的に買いました(笑)。


そして、喜多見といえば、手術シーンだと思います。テクニックを身に付けることも相当大変だったのではないですか?

今回のドラマで我々キャストが誇りに思っているのは、手術シーンの手元の吹き替えをほぼ使わず、自分たちでやったところです。よっぽど難しい処置以外の99%は自分たちでやったので、そこも緊迫感につながっているのではないかと思います。

現場には内臓に近いものが置いてあって、それを縫って、糸を結んで、切って、(菜々緒演じる蔵前夏梅に)渡したら、次に薬剤を注入する。確かに吹き替えの方がしたほうが撮影は早いですが、実際に僕らキャストがやるとリアル感が生まれます。アップのシーンでも一瞬映った手が汚れていたり、きれいに結べなかった糸が付いていたりする。キャスト本人がやらなくても作れますが、やった方がクオリティーが上がるよねという環境を整えてもらえ、さらにその挑戦を面白がれるキャストが集まっていたので、あのシーンを作れたように感じます。


MERのチームワークも大きな見どころでした。

チームワークは本当に素晴らしかったです。それぞれに100%以上のものを出してやるというメンバーだったので、他のキャストやスタッフの方々も賞に選んでいただけたとうかがって、今回一番うれしかったです。


菜々緒さんは「鈴木さんだからこそ、このチームになれた」とおっしゃっていました。

それはこっちの言葉ですよ。夏梅さんが菜々緒さんだったから、音羽先生が賀来(賢人)くんだったから、比奈先生が中条(あやみ)さんだったから、この作品になれた。本当に感謝しかないです。


賀来さんとの共演は、(2014年のNHK連続テレビ小説「花子とアン」以来)久しぶりだったと思いますが、いかがでしたか?

賀来くんほど、一緒にやって頼もしい共演者はいないと思います。撮影後半、時間のない中でバタついたときに、「改善点があったら、教えてほしい」とかっくんに伝えたら、「ここをこうしたら時間が効率的に使えるかもしれません」とすごく的確に言ってくれたんです。

例えば、ドライリハーサル後のテストを1回減らせば、1分短くすることができるので、「後半の僕らだったら、テストなしでいきなり本番に行っても大丈夫だと思います」ということを言ってくれたりしたんです。僕が言うと「ちょっと」となるかもしれないですが、賀来くんが言ってくれることで、「やってみよう」となった。撮影の後半の段階では、全員がテストなしで本番に臨めるぐらいに自分のやるべきことが分かっていて、「恐ろしいチームになっているな」と思いました。当時は感動する余裕もなかったですが、今思うとすごいことをやっていましたね(笑)。


言葉がないです。ERカーやロケ現場も大変リアルで、ものすごいスケール感でした。

最初にロケ現場に行ったときに規模の大きさを見て、労力も予算も含めて、これは「これに見合う芝居をしてくれないと困るよ」という俳優部への挑戦状だなと思いました(笑)。それに対して僕たちも「これぐらいのことはできますよ」と対抗し、お互いに無言のやり合いのようなものがあったので、常にいい緊張感が生み出せていたのではないかと思います。


そうして、見応えのある作品になっていったんですね。最終話では、みんなが「喜多見先生がくれば、何とかなる」と思っていたのが印象的でした。最終話の撮影はどんな気持ちで挑んでいらしたのですか?

音羽先生が大変だろうなと思っていました(笑)。それまで僕が一番大変でしたが、最終話では部屋に引きこもっていて、音羽先生がいつもの喜多見の役割を担っていたので、喜多見の大変さを味わうがいいと思っていました(笑)。それから、一つの大きな悲劇をチームが共有したことで、作中の人物だけでなく、役に成り切っていた我々もそれまでとはちょっと違う空気感になっていて、より強い結束力が流れていたように感じます。

(取材・文=及川静)
TOKYO MER〜走る緊急救命室〜

TOKYO MER〜走る緊急救命室〜

救命救急チーム“TOKYO MER”を舞台に繰り広げられる医療ドラマ。チームのリーダーでスーパー救命救急医・喜多見(鈴木亮平)らが、事故、災害、事件現場に駆け付け奮闘する姿を描く。また、チームメンバーの救命救急医・音羽を賀来賢人が演じる。脚本はドラマ「グランメゾン東京」(2019年、TBS系)などを手掛けた黒岩勉が担当する。

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