ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第113回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演男優賞 受賞インタビュー

撮影=石塚雅人

赤楚衛二

この作品に参加して、自分が超えるべき壁が明確になりました

「石子と羽男―そんなコトで訴えます?―」で助演男優賞を獲得した感想を聞かせてください。

素直にうれしいです。初めて新井順子プロデューサーと塚原あゆ子監督のドラマに参加でき、主演の有村架純さん、中村倫也さんはすごく素敵でしたし、もちろんドラマのストーリーも面白かった。そういう作品に携われて良かったと改めて思いました。有村さん、中村さんと一緒に受賞できたのもうれしいですね。

投票した人からは「大庭は最初、頼りない青年だけれど、石子(有村架純)に告白して彼氏になり、かと思えば後半、殺人容疑で逮捕され、もしかして悪い人なのか?と思わせる場面もあり、いろんな顔を見せてくれた」といった意見が寄せられました。

大庭は真っすぐでいい人過ぎますね。第1話で勤めていた会社でだまされたことが判明し、第9話で名義貸しした会社が不動産詐欺をやっていたことを知る。「まただまされたのか」と言う場面は、僕としても絶望していました(笑)。よく知らない会社に名義を貸すのはダメだろうと…。中村さんたちからは天然キャラだと言われましたが、さすがに僕自身は、そんなうかつなことはしませんよ。

でも、大庭にとっては石子、羽男と出会ったことは大きく、あの2人がいなかったらパワハラで精神的にやられてしまって、転職してからもだまされたままだったと思います。最終話のあと、どうなったのかは分からないですけど、それまでの経緯から想像すると、きっとまた…という不安はあります。「もうだまされるなよ」と言いたいですね。


大庭はあのままずっと潮法律事務所で働いていた方がいいのでは?と思いました。

そうですね。その方が安心できていいかもしれない。続編があるとしたら、大庭は新しい会社に入っているだろうから出番がないとも思ったので。また、だまされて事務所に事件を持ち込むしかないかな?とか(笑)。


クランクインするときは、石子の彼氏になる役というのは知っていたんですか。

はい、聞いていました。ただ、最終的に石子は羽男と結ばれると予想した人も多かったでしょうし、僕も第9話ぐらいで振られるのかなと思っていたんですが、石子の懐が広いおかげで、彼氏のままでいられましたね。第5話では石子をおんぶするシーンがあり、有村さんはすごく軽いんですけど、ちょっと階段が急だったので、「万が一、後ろに倒れてケガさせてしまっては」と怖くて、かなり前に重心をかけて登りました。


有村架純さんとの初共演はいかがでしたか?

以前から有村さんの出演作を見て、セリフ、ニュアンス一つでグッと心をつかむような演技をされる女優さんだと尊敬していたので、一緒にお仕事できると決まったときはうれしかったですし、実際に共演してみて、有村さんが1シーンずつ丁寧に向き合っていることが伝わってきました。

第3話、ファスト映画の回で、僕が映画監督にサインをもらう場面で、大庭は監督のファンであるし、しかし事務所は映画泥棒を弁護しているし、どんなテンションで対面したらいいのだろうと悩んでいたら、有村さんが声を掛けてくれて、一緒に芝居の流れを考えてくれました。

そのアドバイスに救われたので、僕も主演の立場になったとき、悩んでいる人がいたら、有村さんと同じように接してあげたいなと思いました。そういうときの有村さんの距離感が、さりげなくていいんですよね。横に座って「いい天気だね」と話しかけてくれるような寄り添い方で素敵な方だなと思いました。


中村倫也さんとの共演はどうでしたか?

中村さんは頼れるお兄ちゃん。作品全体を客観的に把握しているので、僕が悩んでいるとすぐ方向性を示してくれました。ぶれない中村さんがいるからこそ甘えられた場面はたくさんあります。第5話では、石子に告白した大庭が鼻の下をこすってサインを出し、中村さんと鼻をこすり合う場面が。あの場面は思ったより動作が激しくなってしまいました(笑)。


他に現場で生まれたやり取りで印象に残っている場面はありますか?

第9話で大庭が警察に拘留され、「すいません」と謝ったとき、羽男が「名義貸しをした件と自分が(放火殺人を)やったと供述した点は悪かったけれど、自分のこと責め過ぎ」と言った場面は、中村さんが「この状況なら悪いところは悪いって、ちゃんと言った方がいいよね」と提案してくれて、あのセリフになりました。大庭としても、その方が反省すべきところとそうでないところが明確になって救われると思いました。


第9話は石子と羽男が奔走した結果、大庭が無事に釈放された場面が印象的でした。彼女の石子より羽男の方が先に抱きついてきてしまうという…。

面白かったですね。あの瞬間は石子と羽男が積み重ねてきたものが見えて、素敵な2人なので、大庭がまた頑張っていきたくなる気持ちも分かりましたし、いい時間だったなって思います。大庭にとっても、石子と羽男に対しての熱量が同じぐらいなんじゃないかなと。3人の関係がいい感じだし、石子と羽男は名コンビですよね。


あの場面の大庭は拘留されていたのでひげが生えていましたね。メークではなく、ご自分のですか?

そうです(笑)。意外とすぐ伸びるので、撮影の前の1日だけそらないようにしました。塚原あゆ子監督と話して、釈放の瞬間はくたびれた感じを出そうというので、着ていたシャツもぐちゃぐちゃにしました。


監督賞を受賞した塚原監督の演出はどうでしたか?

勉強になりました。今までは共演の方とセリフが被るのを避けてきましたし、アドリブも変なところで入れないというのを守ってきましたが、このチームでは同時にセリフを言ってもいい。塚原監督から「演じるときの感覚を大切にしてほしい」と言われました。

どうやって役の衝動を伝えるか、相手の演技にどう反応するか。意識しながら演じるうちに「今のカット、こういう表情したよね。こういうことだよ」と言ってもらえて、感覚的なことですけれど、納得で…。演技はナマモノなんだなと学びました。


赤楚さんにとって、この作品での経験はどんなものでしたか?

特別な授業に参加できたような気持ちです。ナマモノの芝居というものを僕が100パーセント理解しているのか?と聞かれたら、まだ分からないけれど、自分が超えるべき壁は明確になりました。これからも悩み苦しみながらやっていこうかなと思っています。そして、もうちょっとパワーアップしてから、またこのチームに参加できたらうれしいですね。

(取材・文=小田慶子)
石子と羽男―そんなコトで訴えます?―

石子と羽男―そんなコトで訴えます?―

有村架純、中村倫也のW主演で、正反対のようでどこか似た者同士の二人が成長する姿を描くリーガル・エンターテインメント。有村は、司法試験に4回落ちた崖っぷち東大卒のパラリーガル・石田硝子、中村は司法試験予備試験と司法試験に1回で合格した高卒の弁護士・羽根岡佳男を演じる。脚本は西田征史が手掛ける。

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