第117回ザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀作品賞 受賞インタビュー

(C)TBS

VIVANT

世界の方にも見てもらいたいという思いが、ほんの少しだけ届いたのかな(飯田和孝P)

作品賞受賞おめでとうございます。投票では「モンゴルロケのスケール感と逃亡劇のスピード感に圧倒された」「海外ドラマに奪われていた日本のエンタメのプライドを取り戻してくれた」と高く評価されました。

ありがとうございます。「VIVANT」を評価してもらえたのは、とにかく面白いものを作り、毎回放送を楽しみにしてもらいたい、そしてそれを次世代につなげたいという、私たち作り手の思いが通じたからかなと思います。
原作・演出の福澤克雄監督もよく言っていることですが、視聴者の皆さんは、優れた作品をたくさん見られる時代になっているので、私たち制作者側がこのぐらいかなと思っていても、さらにその上をいってしまう。だから、妥協せずに面白さを追求していくしかないと思って制作したドラマです。


「VIVANT」は事前情報が少なく、制作発表時から第1話の放送日まで、主人公たちの職業が何であるか、外国で何が起こるのかという詳細はいっさい明かされませんでした。

そうですね。まず日曜劇場の枠、そして堺雅人さんを始めとする豪華キャストの出演が決まった瞬間から、7月16日夜9時に、テレビの前に集まって頂くための注目してもらう一番良い方法を考えました。それにはやはり情報を出さずに「何が起こるんだろう」と作品自体を楽しみにしてもらうのがベストかなと…。もちろん、プロモーションとしては内容を公開したほうがいい、第1話で(発表されていなかった)二宮和也さんが出ることを発表した方がたくさんの人に見てもらえるだろうという意見もありました。あえて、プレゼントの箱を包装紙に包んだまま出すというやり方を選びました。


その結果、今回、ドラマアカデミー賞でも6部門制覇。東京ドラマアウォード2023でも「世界各国のバイヤーが自分の市場で紹介したい日本のドラマ」に選ばれました。

そういった評価を受け、「世界市場での鑑賞にも耐えうるものであった」という言葉をいただいたのはすごく自信になりました。また、バイヤーの方から「お金をかけたから良いものができるかというと、それはまた別次元の話で、良作を作るということはどれほど大変か」というコメントもいただけて、世界の方にも見てもらいたいという思いが、ほんの少しだけ届いたのかなと、少し心が軽くなりました。先ほど言ったように「VIVANT」を成立させるために、制作現場だけではなく、TBSの中の、いろんな部署の人が、いろんな思いをしながらたどり着いたという感覚ですので、関わった皆様に改めて感謝したいです。


監督賞を受けた福澤監督も「放送前は恐怖しかなかった」とおっしゃっていました。

福澤監督は「半沢直樹」(2013年、2020年TBS系)などたくさんのドラマをヒットさせてきた人ですから、今回もヒットを期待されているというプレッシャーはあったと思います。今回はオリジナル作で、3、4年前からこのドラマを構想し、クランクインの1年前から集中して全10話の脚本を作っていました。「ドラマ作りのノウハウを若い人に継承したい」ということも常に言っていて、来年で還暦を迎えるということもあり、若い社員に、モンゴルロケのような今後の自信につながる経験をさせたいという使命感もあったのだと思います。


脚本作りはどのように進めていましたか。福澤監督が原作で、八津弘幸さんが脚本家のチーフ。そして、李正美さん、宮本勇人さん、山本奈奈さんという若手3人がチームを組んだということですが…。

まず福澤監督の頭の中に明確なストーリーがあり、それを聞いた脚本家3人が一斉にシーンを書き出していって、監督がそれを吸い上げて張り合わせるというスタイルでした。脚本家さんにはそれぞれ向き不向きありますし、この場面は誰のアイデアが面白くて、次の場面は他の人の…といいとこ取りをしていく作業が、本当に毎日発生していましたね。脚本家さんたちは毎日午前11時に来てもらいましたが、監督は朝8時ぐらいから前日上がってきたものをチェックしていました。韓国ドラマも、一人の制作者の下に何人もの脚本家をおいて企画を作っていると聞いたことがありますが、この方式は、福澤監督のように見る目があってチョイスできる人がいないと成立しないなと感じました。


しかし、そのチーム方式が今回はうまくいったということですね。

クランクイン前に脚本を全て完成させるという目標があり、3人の脚本家はほぼ毎日顔を突き合わせて作業する中で成長していきました。最終話、乃木(堺雅人)がベキ(役所広司)に銃を向ける場面では、上がってきた台本を福澤監督もほめていましたね。やはり1年近くかけて作っていく中で、彼らもいろんなノウハウを習得したんでしょう。最終的には彼らが監督の発想をちょっと超えた瞬間だったのかもしれません。


野崎(阿部寛)の相棒・ドラムを演じた富栄ドラムさんが人気となり、特別賞を受賞しました。

この賞はドラムさんと日本語音声を担当してくれた林原めぐみさん、お二人での受賞だと思っています。ドラムさんの身のこなしや笑顔はとても魅力的でしたし、それに声を吹き込む林原さんも素晴らしかったですね。


「VIVANT」では、海外を舞台にベキのようなテロリストやテロリズムを描くという挑戦もありました。

そういう側面もありましたが、このドラマではエンターテインメントであることを第一義としましたし、大きな軸は、乃木が生き別れてしまったお父さんを捜すという家族愛の物語でした。ただ、それを描く上で、ベキが言ったセリフのように、国や立場の違う人たちが隣り合わせて生きていく中、お互いへの思いやりや優しさを持つことが必要なんだということは伝えられたかなと…。それが、偶然にも、現在の世界情勢と結びついたかもしれません。

(取材・文=小田慶子)
VIVANT

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堺雅人が主演を務め、阿部寛、二階堂ふみ、松坂桃李、役所広司が共演するアドベンチャードラマ。「華麗なる一族」(2007年)、「半沢直樹」シリーズ(2013年ほか)、「下町ロケット」シリーズ(2015年ほか)などのヒットドラマを世に送り出してきた福澤克雄が原作・演出を手掛けるオリジナル作品。

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