第122回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演男優賞 受賞インタビュー

(C)TBS

神木隆之介

波瀾万丈だった鉄平の人生…僕は結構幸せだったと思っています

「海に眠るダイヤモンド」で鉄平と玲央役を演じ主演男優賞を受賞されました。まず感想をお聞かせください。

ありがとうございます!最初は1人2役を演じることが初めてということもあり、1人2役で演じる意味やどこで違いを出していけばいいのかなど悩みました。ただ次第に、鉄平と玲央は雰囲気だったり目の奥で違いを表現できればいいのではと思うようになりました。

最終話で、鉄平と玲央は実は似ていないということが判明しますが、その設定を最初から知っていたのでしょうか?

撮影に入る前に全話の準備稿を頂いていて、そこに書かれていました。最初はえっ?と思いましたし、塚原(あゆ子)監督からも「準備稿なので変わるかもしれない」と言われていたのでどうなるんだろうと思っていたら、最終的に最初の設定のままでした。あくまでも端島パートでの鉄平はいづみさんの心の中にいる鉄平なので。人の記憶って美化されるものですし、思い出ってそういうものかなと納得しました。

ただもう一つ思ったのが、実はいづみさんというか朝子は鉄平の中にある寂しさみたいな部分を感じ取っていたのかな?ということで。鉄平は兄姉を亡くしていて、家族や島の人のためにも常に明るく振る舞おうとしていた人間なので、本当の彼の姿はよく分からないんですよ。いつも笑顔でいる鉄平が朝子の前だけ見せていた素顔と玲央の雰囲気がつながっていたのかな?なんて考えたりしました。


朝子を演じた杉咲花さんとのシーンも印象的でしたが、撮影現場はどのような感じだったのですか?

杉咲さんご本人にも伝えているのですが、彼女は“怪物”です(笑)。これまで共演は何度かあるのですが、今回はよりその怪物っぷりを見せつけられました。ファーストカットは確か第1話の食堂でおつりをもらうシーンだったのですが、「よーい」とかかった途端に表情から雰囲気まで全てが朝子そのものになっていて、こんな人と一緒だと飲み込まれる…と焦りました(笑)。

なので撮影の合間を見つけてはいろいろ話しかけて、杉咲さんの集中力をなくさせて本番に臨もうとした時もありました。まぁ全く意味がなかったですが(笑)。あと、「お手柔らかに」とも伝えましたが、「何を言っているんですか!」と笑われて…。こっちは本音だったんですけど伝わらなかったです。


第6話の鉄平と朝子の告白シーンはかなり反響を呼びました。あのシーンは神木さんが提案されたとのことですが。

そうなんです。恋愛リアリティーショーのような生っぽさをプラスしたく提案しました。ドラマなのにドキドキするという感覚を伝えられたかな?と思っています。鉄平の気持ちが見ている方に伝わっているとうれしいですが。現場は塚原監督ら皆さんと話し合いながら一緒にドラマを作れる現場だったので、すごくやりやすかったです。撮影も、第1話の端島のことを何も知らないシーンと最終話のいづみさんと一緒に端島に降り立つシーンを同じ日に撮影するなど、かなり話数を前後して撮っていたのですが、監督がしっかりとそのときの鉄平や玲央の状況や感情を伝えてくださったので、困ることはなかったです。


朝子を含め、賢将(清水尋也)、百合子(土屋太鳳)ら幼なじみ4人と、リナ(池田エライザ)のシーンも多かったと思います。同世代の皆さんは撮影の合間などどのように過ごしていたのですか?

本当にたわいのないことを話したりして、みんなと和気あいあいと過ごしていました。清水さんは役にもにじみ出ていましたがすごくいいヤツで。一緒にいて楽しかったです。土屋さんは本当に複雑な役だったのですがそれを見事に演じていて、さすがだと思いました。

池田さんは初めてだったので、勝手に「話しかけないで!」みたいなことを言われるんじゃないかと最初ビクビクしていたんですよ。どうしてもランウェイを歩いているモデルのときの印象が強く、あのときってめちゃくちゃ強そうじゃないですか(笑)。でも話しかけるとすごくフランクで。ゲームの話などかなり盛り上がりました。そして百合子同様、リナもすごく複雑な役で。5人で一緒にいてもどこか異質な存在として映っていなければならないのですが、それを見事に表現していて素晴らしい俳優だと思いました。このメンバーで一緒に過ごしたことはかなり刺激があって楽しかったです。


最終話で鉄平が端島を出た後のことが少し描かれていましたが、神木さんから見て鉄平は幸せだったと思いますか?

塚原監督がずっと「鉄平の告白が遅い!」って怒っていましたが、まさにそれで(笑)。もっと早くに気持ちを伝えていれば…とは思いました。そして演じていて感じたのは、思っている以上に鉄平は諦めの悪い性格だったみたいで。きっといくつになっても朝子のことを思い続けていたんだと思います。そんな鉄平の思いを伝えたいと、台本には描かれていなかったですが、手紙を書くシーンなどは表情で朝子への忘れられない気持ちを表現しています。

なのでラストのいづみさんが鉄平の育てたコスモスを見てくれたシーンはすごくうれしくなりました。あれで鉄平の思いは晴れたのではないかと。それまではきっと死んでもいづみさんの周りをうろちょろしていたと思うので(笑)。いろいろあったけど、結構幸せだったんじゃないかと思います。


鉄平の濃い人生が描かれて壮大なドラマを見させてもらいました。

意外と端島の中では時間がたっているんですよ。一つの出来事が解決したら、次のシーンでは数カ月後のことが描かれていたりして。もちろんその間、彼らにも日常があるのでそれを考えながら演じていたのですが、描かれていない部分だったり鉄平と朝子以外の人のその後の人生など、別角度からみんなを主人公にした物語を見たいと思いました。それくらい奥が深い作品だったと思います。


過去があって今があるということに思いを巡らせた視聴者の方も多かったと思います。

この作品に参加して、自分にも代々受け継がれてきている過去があることを身近に感じました。それは人だけではなく物も同じで。例えば当たり前のように使っている携帯電話も、誰かの発想から始まって発見があり改良があって今がある。見えているものだけではなく、全てのものに歴史があることを改めて感じました。そしてこの作品も次の時代に受け継がれていくといいなと思いました。その時代の人たちの目にこの作品がどう映るのか、すごく楽しみでもあります。


端島を含む、長崎でのロケも多かったと思いますが、神木さんにとって長崎は忘れられない場所になりましたか?

本当にいい経験ができたと思います。実は4月に長崎で個人イベントを開くことになっているのですが、それもこの作品があったからこそだと思っています。長崎だからできることをしたいと思っているので、思いっ切り楽しんでいただきたいです。そして、撮影中は時間がなくてロケ地しか行けていないので、今度は観光したいです。鉄平や朝子、玲央たちが食べていたちゃんぽんもまた食べたり、みんなが歩いていた街並みをゆっくりと味わいたいです。

(取材・文=玉置晴子)
海に眠るダイヤモンド

海に眠るダイヤモンド

昭和の高度経済成長期と現代を結ぶ70年にわたる愛と青春と友情、そして家族の壮大なヒューマンラブエンターテインメント。芸歴28年の神木隆之介が、日曜劇場初主演を務める。また、脚本は野木亜紀子、監督は塚原あゆ子、プロデューサーは新井順子が担当。「アンナチュラル」(2018年、TBS系)などを手掛けたヒットメーカーが集結する。

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