第122回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演男優賞 受賞インタビュー

(C)TBS

坂東龍汰

みっくんは僕にとってターニングポイント!

「ライオンの隠れ家」(TBS系)で主人公・小森洸人(ひろと・柳楽優弥)の弟・美路人(みちと)を演じ、助演男優賞を初受賞しました。

ありがとうございます。この作品で賞を頂けたことが本当にうれしいです。「ライオンの隠れ家」というドラマが皆さんに愛されていたんだなと…。僕たちの熱量がちゃんと届いて、見た人がその熱量を何倍にもして返してくださるという作り手と受け取り手のコール&レスポンスがすごく感じられました。たくさんの投票をありがとうございました。

「みっくん」こと美路人は自閉スペクトラム症(ASD)で、選評では「その特徴を細部まで研究し、リスペクトを持って演じた」「緻密かつリアルな演技力に驚かされた」と絶賛されました。

この役の話を頂いたのが1年前、クランクインの1カ月前から監修の伊庭葉子先生が運営される施設に足を運び、どう演じるかを考えました。いろんな本を読み、映像資料も見ましたが、やっぱり施設で体験したことが大きかったですね。演技について悩むのは楽しくもあり苦しくもあり、答えがすぐ出る役ではなかったので、監督や柳楽さんに僕の思っていることを伝えながら作っていきました。

「撮影初日までになんとかしないと…。もうちょっと考える時間がほしい」とも思いましたが、最初に撮ったのがスーパーで柳楽さんと買い物をして自転車の色をチェックするシーンで、現場で「みっくんはそれでいい」と受け取ってもらえたと感じました。「これは絶対いい作品になるな」という手応えもありました。


難しい役での演技力が評価されただけでなく、「みっくんを愛すべきキャラクターに作り上げた」という意見も寄せられました。

いろんな人から「みっくん、かわいかったよ」と言ってもらえて良かったです。撮影後半になると、街中でも「あ、みっくんだ」と声をかけられるようになりました。みっくんはピュアだし、本当に優しい心を持った人。あの純粋さを撮影中ずっと保っているのは、結構大変でしたが、僕自身も生活の中で潜在的に感じる美しさとか人の優しさを改めて見つけることができたので、本当にみっくんに出会えて良かったなと思いますね。


美路人は日常のルーティンが崩れるとパニックに陥り、バスの中でも兄がいないことに気づくと暴れていましたが、最終回(第11話)では家を出てグループホームに入ることを決意し、洸人と離れ、1人でバスに乗りました。なぜ成長できたのでしょうか。

なぜでしょうね。ライオン(佐藤大空)と一緒に暮らすようになって、姉の愛生(尾野真千子)とライオンが強引に連れ戻され…と、大きな事件があったわけですけど、みっくんはお兄ちゃんとライオンの存在にずっと支えられていたし、実は支える側でもあった。同じ職場で同じ特性を持つ小野寺さん(森優作)から「いつかは1人で生活しなきゃいけない」と言われるなど、いろんなことが起こる中で心の変化があったから、最後は自分で「ホームに行く」という決断をしたんだと思います。


愛生とその夫を巡る事件が解決した後、1話をかけて美路人と兄の姿を描いたことも、好評でした。

そうですね。10話で終わってもおかしくなかったけれど、11話で、みっくんとお兄ちゃんの「その後」まで描いてもらえたのはうれしかったです。「このドラマで伝えたいことは11話にあったんじゃない?」という感想も聞こえてきました。最後にみっくんがお兄ちゃんと海岸の壁に完成させた絵も、Google Mapで「ドラマ ライオンの隠れ家 みっくんが描いたライオンの絵」とマッピングされていて、そんな皆さんの反響がうれしかったです。


柳楽さんとの共演はいかがでしたか。

今回が初めてでした。柳楽さんがこれまで演じた役から、ちょっと怖いイメージもあったのですが、初対面のときから笑顔がすてきな人で、「一緒にお芝居できるの、うれしいと思ってるよ」と言ってくださって、安心しました。僕が芝居で悩んでいるとすぐ気づいてくれ、「好きなようにやってみて。僕は全部受けるから」と言ってくれるんです。そんな関係で撮影の5カ月間を一緒に過ごし、ついにクランクアップというときは、寂しい気持ちで終わる日までを指折り数えていました。「もう終わっちゃうね」「あと2日ある」「今日はまだ一緒にいられるね」って…(笑)。


それでクランクアップの瞬間は、どうなりましたか。

こんなことは初めてなんですが、僕は号泣してしまいました。ライオン役の大空くんもきっと大泣きするだろうと思っていたら、全く泣かなかったんですよ。5歳(現在6歳)なのに、完璧にプロです(笑)。


佐藤大空くんとは仲良くなりましたか。

はい。でも、初めは役柄と同じように距離があった方がいいのかな、その方が大空くんのリアルな表情が撮れるかなと思っていたら、そんな必要は全くなく、大空くんは完璧な役者さんで、どんな場面でも切り替えて演技ができる。天才だと思いましたね。でも、年齢相応の子供らしさもあって天真爛漫(らんまん)なところが、かわいかったです。


撮影が終わった後はどんなふうに過ごしていましたか。

誰よりもロスしてました(笑)。ドラマを見直したり、自分が現場などで撮った写真やInstagramにアップした写真を何度も見返したりして…。1カ月以上そんな感じでした。やっぱり家族のような関係を作れた現場でしたし、あの小森家がもう自分の家のような気持ちがしていたのかも…。


こうして評価もされ、坂東さんにとって「ライオンの隠れ家」はどんな作品になりましたか?

いろんな意味でターニングポイントになりました。これまでは僕を知らない人の方が多かったと思うんですけど、みっくんを通して坂東龍汰という存在をお茶の間に広く知ってもらえたことがすごく大きいです。ただ、そこで浮かれるのではなく、今までどおり一つ一つの役に「これで最後なんだ」というぐらいの思いで取り組んでいきたい。これからのフィールドでまた、自分なりのお芝居を見つけていけたらなと思います。そして、いつか主演男優賞も取れたら、うれしいですね。そのときはまた、投票よろしくお願いします!


(取材・文=小田慶子)
ライオンの隠れ家

ライオンの隠れ家

柳楽優弥がTBSドラマ初主演を務める完全オリジナルのヒューマンサスペンス。家族愛や兄弟愛の変化を描く愛と絆の物語。自閉スペクトラム症の弟・美路人(坂東龍汰)と2人暮らしをしている兄・洸人(柳楽)の元に、突如“ライオン”と名乗る小さな男の子が現れる。この出会いをきっかけに彼らは“ある事件”に巻き込まれていく。

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