第123回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演男優賞 受賞インタビュー

(C)TBS

松坂桃李

同世代と挑戦的なドラマを作れたことが次のステップへ進むための力に

日曜劇場「御上先生」(TBS系)で文部科学省から私立の難関・隣徳学院に派遣された官僚教師・御上孝を演じ、主演男優賞を初めて受賞しました。投票した人からは「非熱血型の新たな教師像を見事に体現していた」「生徒たちに自分で考えさせる教師として、落ち着いて話しながらも、心の熱さを感じさせる演技が素晴らしかった」という感想が来ています。

ありがとうございます。素直にうれしいですし、本当に生徒たちのおかげだなと思いました。撮影では、29人の生徒たちの“受け”の芝居が良かったからこそ、御上の授業や教壇から言葉を語りかけるときの立ち居振る舞いがちゃんと成立しました。こういう評価を頂けたのは、ひとえに生徒のキャストが素晴らしかったからです。

「御上先生」は作品賞、監督賞、ドラマソング賞も獲得し、4部門受賞です。

それが自分の受賞よりうれしいですね。共演者のみなさん、スタッフさんと一緒に評価してもらえたという実感があります。今回、僕は日曜劇場初主演で、2年前「VIVANT」(2023年TBS系)で一緒だった宮崎陽平監督も初めてチーフ監督となり、お互いに緊張して臨んだ作品でしたが、結果的にこうして一緒に受賞を分かち合えて、本当に良かったです。


御上役で難しかったところ、工夫したのはどんなところですか?

とにかく授業のシーンが大事なので、そこで御上として言うセリフの内容、真意をどれだけ生徒の皆さんに届けられるかということを考えました。また、クランクイン前、陽平監督から「放送の尺もあるので、スピーディーに話してほしい」というリクエストをされ…。ただ、セリフが速くなりすぎて分からなかったら意味がないし、御上は官僚でもあり教師でもあるので、官僚然とした部分を残しつつ、そこに生徒たちを思う気持ちが織り交ざるようなニュアンスが出せればと苦心しました。


「話し方など、“試験に落ちたことがない”スーパーエリートの官僚にしか見えなかった」という意見も寄せられています。松坂さんはここ数年、官僚の役が多いですね。

そうなんです。(内閣情報調査室の官僚を演じた)映画「新聞記者」(2019年)からだと思いますが、「御上先生」では文部科学省、映画「フロントライン」(2025年6月13日[金]公開)では厚生労働省の官僚を演じました。さらに、大河ドラマ「逆賊の幕臣」(2027年放送予定、NHK総合ほか)で演じる小栗忠順も官僚的な立場の人なので、続いていますね。官僚役が似合う? いや、官僚っぽいという自覚はないんですが(笑)、見てくださる人のイメージにはあるのかも。


「御上先生」では御上が官僚だからこそ、教育現場で忙しく働く教師にはない視点を持っているさまが描かれました。

教育の指針を作る役所から飛び出してきた人が教育現場に行って何を発言するか。やはりずっと教師をやってきた人とは違いがあると思ったので、温度感の差は絶対に出したいなと意識しました。「日本の教育は今のままでいいのか」など、物語のポリティカル(政治的)な要素で伝えるべきところはしっかりと伝える。そこに熱を込めると御上の温度感が出せるのではと思いながら演じました。


何のために受験勉強をするのか、真のエリートとは何か。そういった御上の問いに生徒たちがついていけるというのが、またすごかったです。

もともと成績優秀な子たちという設定がベースラインにあるので、従来の学園ドラマのように熱血教師がやって来て何かを変えていくというプロセスを飛ばし、その必要がない状態から展開していきましたからね。それはすごく新しく、かつ、いい学園ドラマだなと。そして、こういう作品が地上波で通用するのかということにも興味がありました。放送が始まると、この業界ではない友達からも「面白いドラマが始まったね」という感想をもらい、伝わっているなという手応えを感じましたね。


生徒たちとのやり取りで印象に残っていることは?

最終的にどう演じるかは、その場面のやり取りで変わってきます。現場で肌身に感じたことを素直に返していく感覚で、才能あふれる生徒役の皆さんの芝居にだいぶ助けられました。例えば、神崎役の奥平大兼くんは“生感”を重視して、カットごと、テイクごとに違う温度の演技をする。だから、そこで生まれた芝居を優先してセリフのラリーをしました。


現場では、まるで松坂さんがお芝居の先生でもあるかのように、生徒役のキャストが「今の演技はどういう意図でしたんですか?」と質問してくることもあったそうですね。

いや、もう僕は本当に感心しましたよ(笑)。そんな質問をするなんて、自分が10代の頃には先輩に対してできなかったことで、それを自然にやってしまう彼らの純粋さに。今の子たちは、ものの考え方やモチベーションの持ち方が、本当にしっかりしていて、志が高い。でも、撮影の合間はごはん食べて眠くなっちゃったり、写真を撮って楽しそうにSNSにアップしていたりと、年齢相応のかわいらしさもあるんですよね。僕も高校生ぐらいのときに「御上先生」のような作品に出会いたかったなと、つくづく思いました。


クランクアップのときは、生徒役のキャストに、何かメッセージを贈りましたか?

撮影で使う割本(台本からその日撮影する場面だけがコピーされたもの)の表紙に、いつも飯田和孝プロデューサーが長文のメッセージを書いてくれていたんです。それを読んでいるうちに、だんだん自分も生徒たちに向けて書きたくなって、撮影が終わるころ、「お疲れさま」と「本当にありがとう」という感謝の気持ちを込めて、文章を書きました。


他の共演者についても教えてください。御上とは文部科学省の同期である槙野を演じた岡田将生さんとは「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系)シリーズなどで何度も共演していますね。

槙野という役を岡田が引き受けてくれて本当に良かったです。御上と槙野は、最初は仲が悪いように装い、実はおのおの学校と文科省に探りを入れていて、最後は倒すべきものに対して共闘するバディー。一回離れたところからまた交わるというグラデーションを作るには、岡田将生ぐらいの強い関係性がなければできなかったと思います。関係というのは「ゆとりですがなにか」でワチャワチャやってきたことも含めて(笑)。他にもお互いがいろんな作品に出て、そこでの出会いを経て、今回再共演できたので、きっとそれが映像にも出ていると思います。


松坂さんにとって岡田さんはどういう存在ですか?

同世代の俳優の中で刺激をもらえるライバルでもあり、友でもありますね。今回もクランクアップした瞬間は「お疲れ様!」「ありがとう」「じゃ、まだご飯で!」みたいな会話しかしませんでしたけれど(笑)。


隣徳学院の生徒思いな教師、是枝を演じた吉岡里帆さんとの共演はどうでしたか?

吉岡さんも「ゆとりですがなにか」など、共演する機会が多いんですよ。彼女は瞬発力があって、一緒にお芝居をすると、「じゃあ、この距離感で」とチューニングするのがすごく速い。それは彼女が経験で培ったものと、もともとすごい感性を持っているからだと思います。でも今回、御上はわりと最初の段階から是枝先生を同志だと考え、自分の思いを伝えていたのに対し、是枝先生の方は御上に対する思いが不信感から信頼へ変わっていったので、大変だったかもしれませんね。


最終話、御上は隣徳学院と文科省の癒着という問題を解決しましたが、文科省には戻らず、高校の校舎を歩いていくところで終わりました。納得のラストですか?

そうですね。監督たちと「御上は最後、隣徳に残るんじゃないですか」という話をしました。ラストシーンをよく見ると、黒板に映し出されている文字にヒントがあって、御上は新年度から1年生のクラスを受け持つんです。おそらく、その学年の生徒たちを3年生まで見守っていくんだろうな、と。それが感じられるラストになって良かったと思います。


改めて、「御上先生」は松坂さんにとってどういう作品になりましたか。

すごく「糧」になった作品でした。僕は今36歳ですが、監督たちもあまり変わらない年齢で、日曜劇場の座組としては平均年齢が低かった。そんな僕たちがこれだけの熱量を持って「御上先生」という挑戦的なドラマを作れたことに、とても大きな意味があると思います。飯田プロデューサーをはじめ、制作の皆さんも「次の世代を育てたい」ということを言っていて、本当に、次のステップへ進むための力になると思いますね。

「御上先生」の続編ができるかは、ちょっと分からないけれど、5年後、10年後にはまた違う時代の切り取り方をした作品が生み出されるでしょうし、自分もできればそこに携わっていきたい。それまでにまたいろんな経験を積んで、今回とは違った刺激を出せるように努力したいなと思います。

(取材・文=小田慶子)
御上先生

御上先生

とある高校を舞台に、権力争いや国の思惑、大人社会の要素を盛り込んだ新たな学園ドラマ。東大卒のエリート文科省官僚・御上孝(松坂桃李)は、官僚派遣制度によって私立高校へ出向することに。彼は官僚でありながら自ら教壇に立ち、現代の高校生たちを自分なりのやり方で導くとともに、権力に立ち向かっていく。

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