第123回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演女優賞 受賞インタビュー

撮影=阿部岳人

渋谷凪咲

怖がらせようとせず、無邪気に演じることを心掛けました

「地獄の果てまで連れていく」の花井麗奈役で、2位に大差をつけての受賞となりました。

わ~!(喜) ありがとうございます。夢のようです。何よりたくさんの方に作品を見ていただけたことが本当に幸せだなって感じます。
「第48回日本アカデミー賞」で(映画「あのコはだぁれ?」にて)新人俳優賞を受賞したときに、西田敏行さんが「助演女優賞をとるのはすごく大変なことだ」とおっしゃっていたという言葉を聞いたんです。それは、主演の方を支えながら演じるという役割が何より難しいからだと。そのお言葉を聞いて「私もそんなふうに作品を支えながらも輝けるような人になりたいな」という夢をちょうど持ったときに、このザテレビジョンさんの賞を頂けるというのを聞いたので、それも含めてすごくうれしくて。もっともっと頑張りたいって思いました。


麗奈は罪悪感や良心が欠如しており、平気で殺人も犯してしまうモンスターという難しい役どころでしたが、渋谷さんは麗奈をどんな人物と捉えていますか?

私も最初に台本を読んだときは、なんでこんなことをするんだろう?と思うことが多く、麗奈という人物を理解するのは難しかったです。でも、麗奈だけにフォーカスして読むと、また違った見え方ができるようになりました。松田(礼人)監督ともお話をさせていただいて、麗奈は動物的な愛を持っていて、麗奈の行動には麗奈なりの理由があるんだと分かったんです。「この人のことが好き。とられたくない、だから邪魔なものはいらないよね」という、すごくシンプルな考えなんですよね。あとはやっぱり、麗奈の過去。化け物になる理由が必ずある。なので、そういう背景とかを考えながら、監督やスタッフさん、共演者の方々と一緒に作らせていただきました。


演じていて意識されたことはありましたか?

一番大事にしていたのは、怖がらせようと思ってお芝居をしないことです。怖がらせようとしている香りを感じた瞬間に自分だったら冷めちゃうなと思うので、無邪気に、楽しみながらお芝居をすることを心掛けていました。全部いたずらのような感覚で「この人、消しちゃおう❤」みたいな(笑)。だから、血まみれで紗智子(佐々木希)に見せる笑顔も「先輩(紗智子)がやっと来てくれた❤」という気持ちから出てきたものなんです。難しいことは考えずにシンプルに、今目の前で起こってることを、どう片付けようかな?って楽しみながら、無邪気に行動することを大切にしてました。だから、あまり細かいところは自分では意識していなくて、放送を見て「あ、こんな顔してたんや」と思うことも多かったんです。


炎の中で笑うときに首を傾げる麗奈が、かわいいのにすごく怖くて、印象に残っています。そういったしぐさも自然と出てきたものなのですか?

そうですね。でも、かわいいって言っていただけてすごくうれしいです!あのシーンは、台本に「血まみれで天使の笑顔で」って書いてあったんですよ。でも天使の笑顔をつくろうと思ったら天使にはならないからどうしようと思ったんですけど、麗奈の感情としては、シンプルに今、目の前の人を消したいという気持ちだけ。そう考えると、炎も麗奈にとっては美しい光景なんだと思って。「全部がこれでやっと終わる」「やった!」「スッキリ!」みたいな。麗奈にあるのは幸福感なんだなと思って。その思いで炎を見ていたら、自然とあの笑顔になりました。私自身もウソとか、難しいことが苦手な人間なので、あまり考え過ぎると全部が表情に出ちゃうんですよ。だからこそ、シンプルにその時の感情を素直に表現するみたいな感覚かもしれないですね。


麗奈が見せる子供のようなピュアさと無邪気さが、本当に怖かったです。

ありがとうございます。怖いと言っていただけるのが一番うれしいです!麗奈は動物が自分の命をつなぐために本能で狩りをするように、動物的な本能で動いている本当に素直な子だと思いました。そういう嗅覚や本能的に生きるというところは、自分と重なる部分もあるので、その感覚も大事にしていました。


渋谷さんの中にある麗奈と重なる本能的な部分とは?

私、すごく直感的なタイプなんですよ。計画とか考えずに、「これだ!」って思ったものには猪突猛進になる節があるので、そういうとこはちょっと麗奈と重なるかな?と思ったりします。


ということは、麗奈に共感できる部分もある?

そうですね。さすがに麗奈のように暴力的な面はないですけど(笑)。私は、自分が感受性がすごく豊かだと感じています。他人から悲しい相談を受けたら自分も一緒に悲しくなっちゃったり、他人の感情にすごく共感してしまうんです。それは役に対しても同じで、最初は理解しがたかったけど、麗奈のことを考えるうちにどんどん麗奈に共感していきました。だから私は麗奈をあまり悪い人とは思えてなくて。麗奈もかわいそうなところがあるし、報われてほしいなって思いがあるんですよね。こんなふうに麗奈を愛せたのは、現場の皆さんと麗奈というキャラクターを一緒に作り上げられたから、そして、視聴者の皆さんに楽しんでいただけたからこそだなと思っています。


主人公・紗智子を演じた佐々木希さんの印象をお聞かせください。

もうすっごく優しくて、女神みたいな方でした。飾らない美しさがあって、どんなときも楽しくいてくださるし、気を使わせない気遣いをしてくださるんですよ。素晴らしい女優さんなので、最初はそんな佐々木さんと一緒にお芝居をすることに緊張していたんですけど、私の緊張を全部佐々木さんがほどいてくださいました。相手が佐々木さんだから、麗奈ができたと本当に感謝しています。

紗智子を攻めるシーンは、佐々木さんには本当に怖がってもらいたかったので、監督と「どうやったら佐々木さんを怖がらせられるかな?」と相談をしていました。リハーサルと違うお芝居をあえて本番でサプライズ的にやってみたり、自分なりにアプローチの仕方を変えて楽しませていただきました。そうやって自由にチャレンジできたのは、佐々木さんが何をしても全部受け止めてくださるからこそだったので、本当に感謝しています。


佐々木さんがお芝居ではなく、心の底から怖がっているところもあったのでしょうか?

はい。カットが掛かった瞬間「怖いよ~!なんでそんなに笑ってるの!?」って言われていました(笑)。そんなやり取りもすごく楽しかったです。


作品は恐怖の復讐(ふくしゅう)劇ですが、撮影現場は和気あいあいとしていたんですね。

ほのぼのしていましたね。麗奈があまりにも怖過ぎて、みんな面白がっているところもありました(笑)。カットがかかると、怖くて爆笑みたいな。怒鳴りながらリンゴを切るシーンも、カメラマンさんがアングルにこだわってくださったりと、各部署のプロの方々がもっと麗奈を怖く見せよう、もっと良くしようと向き合ってくださって。麗奈に対してそう思っていただけることがすごく幸せでした。

私が麗奈をちゃんと表現できているか不安もあったんですけど、松田監督に「放送した瞬間に、凪ちゃんの俳優としての人生が一気にガラッと変わるから楽しみにしてて。僕たちが絶対に変えてみせるから」って言っていただいて、その言葉に力を頂きました。そのぐらい監督さんをはじめ、スタッフの皆さんが愛を持ってこの作品を作ってくださったから、今こうして賞を頂けていると思いますし、本当に人生を変えていただくきっかけになりました。この巡り合わせを大切に、次にまたお仕事をさせていただく機会があったときには「渋谷、成長したな」と思っていただけるよう、これからももっともっと頑張りたいです。


1月クールは、「地獄の果てまで連れていく」の他に「離婚弁護士 スパイダー〜偽りと裏切り編〜」「私の知らない私」(共に日本テレビ系)と3本のドラマに出演し、俳優としても大活躍の渋谷さん。お芝居の面白さは見つかりましたか?

はい。お芝居は自分一人じゃできないもので、そこがすごく面白いです。自分の中で「こんな感じかな?」って想像していても、いざ目の前に共演者の方と対峙すると、セリフを言うタイミングや言い方が自然と変わってくるんです。これがキャッチボールなんだ!って。そこで生まれるリアルな感情も楽しいと思えるし、監督と話し合いながら一緒に役を作っていくのもそうです。誰が欠けてもできないということが素晴らしいなと感じていて。だからこそ、もっといろいろな作品にチャレンジしてみたいなと思うようになりました。いろいろな方といっぱい出会って、いろんな感情を知っていきたいです。


渋谷さんの中でお芝居は、これまでのアイドル活動や、バラエティーとは異なるものなのでしょうか?

全然違いますね。女優さんはお芝居、とにかく役になりきるというか、役として生きる。自分の考えというよりも、役として考えるんですけど、アイドルはいかにグループの中で自分らしさを出せるかが必要だと思います。だから、自分を突き詰めて、周りと同じ振り付けで踊っていても、そこにいかに個性を光らせるかというところが勝負だったりして。

そして、バラエティーは生の魅力がありますよね。お芝居は何度もリハーサルやカットを重ねるけど、バラエティーは同じことはしないし、1発目のリアクションが絶対一番輝いているから、私は瞬発力の勝負だなと思っています。全部全然違っていて、それぞれの緊張感があって面白いです。全部やらせてもらっているからこそ、その経験が全てに生かされるというか、全て経験させてもらって良かったなと日々感じることばっかりですね。


今後もマルチに活動を続けていくのが理想?

はい。アイドルは卒業しちゃったんですけど、バラエティーを頑張りたいからお芝居も頑張りたいし、お芝居も頑張りたいからバラエティーも頑張るっていう。今は自分の可能性をとにかく決めずに、頂けるものは全部挑戦してみて、自分の可能性を広げることを目標にしています。

(取材・文=鳥取えり)
地獄の果てまで連れていく

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佐々木希がTBSドラマ初主演を務める、2人の女性の愛憎渦巻く復讐劇。紗智子(佐々木)は高校時代、味方だと思っていた麗奈(渋谷凪咲)に殺されかけ、父の命まで奪われた。それから14年、復讐のためだけに生きる紗智子は、顔を整形して身分を偽り、新米母となった麗奈の家庭にベビーシッターとして入り込む。

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