第124回ザテレビジョンドラマアカデミー賞監督賞 受賞インタビュー

(C)フジテレビ

平野眞、森脇智延

時代ものという制限に“もがいた”ところも面白かったところもあります(平野眞監督)

監督賞、おめでとうございます。平野眞監督は「ショムニ」(1998年)、「HERO」(2001、2014年)、「空から降る一億の星」(2002年いずれもフジテレビ系)で受賞された経験があり、森脇智延監督は初受賞です。率直な感想をお聞かせください。

平野:うれしいですね。「波うららかに、めおと日和」はかなりタイトなスケジュールで撮影したんですが、昔、「ショムニ」のときもそうだったので、宋ハナPには「逆にこういう作品には運がついてくるよ」と言っていたら、本当にこうして賞を頂けました。ただ、今回は昭和11(1936)年、スマホもテレビもない時代の物語で、現代とは全く違う世界観。時代ものという制限に“もがいた”ところもあったし、面白かったところもあります。
森脇:僕は第3話から演出しましたが、最初に脚本を読んだときに「えっ、これどうするの?」って(笑)。新婚夫婦が家の中でご飯を食べているだけなので、どうやって盛り上げればいいのか不安になりましたけど、とにかく、なつ美(芳根京子)と瀧昌(本田響矢)を中心に人物の細かい心の動きを映し出そうと心がけました。それだけにこうして受賞できてうれしいです。

平野:撮影が始まったときは、なつ美と瀧昌だけの2人芝居が続いたんだよね。でも、それで関係性が早い段階でしっかり作れたのかなと思います。


投票した記者や審査員からは「結婚してから始まるラブストーリーにときめいた」「手を握ることやキスをするだけで大騒ぎになる初々しい恋愛模様を面白く見せた」と評価されています。いわゆる少女漫画的な世界観をベテランの男性監督たちが作り上げたんですね。

平野:いや、俺たちも恥ずかしかったですよ。とにかく宋Pが胸キュンを求めていて、ときには「ここはかわいくないとやだ!」とまで言われたので、頑張りましたが、時折「俺は何を撮っているんだ」とわれに返る瞬間も…。でも、宋Pの目指した方向は間違っていなかった。「このドラマは、なつ美と瀧昌の初々しさゆえの甘いやり取りにときめくんです」と断言されたら、「なるほどね」だし、もうそれに乗るしかない(笑)。

森脇:そうですね。やるからには徹底的に向き合いました。セリフ回しも演出プランも、ちょっとでも過剰になると“やりすぎ”になってしまう。でも逆に抑えすぎると“何も伝わらない”。そのさじ加減がとても難しかったし、だからこそ面白かったですね。


芳根京子さんは主演女優賞を獲得しました。演出していかがでしたか?

平野:芳根さんは高校生のときに「ラスト・シンデレラ」(2013年フジテレビ系)に出てもらって以来。そのときから印象が強かったけれど、今回、本格的に演出して、やっぱりうまいなぁと思いましたね。なつ美役では、胸キュンする新妻として「やりすぎの一歩手前までやってみて」とお願いしました。ラブコメとしてギリギリまで攻めないと、面白くならない。でも、ちょっとでもやりすぎると視聴者に敬遠されるから、現場で相談しながら演じてもらいました。

森脇:瀧昌が航海に出ることになり、なつ美が「寂しい」と泣くシーンは、初めてピュアな恋心が出てくる場面。芳根さんはどう演じるかすごく悩んでいて、僕はその悩みを聞いただけでしたが、本番では芝居の力に圧倒されました。こちらが何かを与えるというより、彼女の中にすでにあるものが現場で自然と引き出されてくる。そういう役者さんなんです。


瀧昌役の本田響矢さんは助演男優賞。本作で注目され、ブレークしました。

平野:キャスティングのときに会ってみたら、声がちゃんと通る人で、セリフが伝わるし、男性としてすごく色っぽい。演技の伸びしろは未知数だけど、こちらの演出にうまくはまれば面白いことになると思いました。主演経験豊富な芳根さんがいるから、演技の振れ幅があっても彼女が回収してくれるという安心感もありましたし。

森脇:響矢くんは最初すごく悩んでいましたよ。1時間以上、話し合ったことも。でも、第1話が完成してそれを見たら感覚がつかめたのか、現場でも笑顔を見せるようになり、9話のときには、それまでこちらの話を「はい、はい」と緊張して聞いていたのが、「はい」と一言だけ力強く返ってきて、成長を感じました。

平野:台本に描かれていることをしっかり演じようという姿勢は、最初から最後まで一貫していましたね。でも、瀧昌役ですごい人気が出たから、この業界を知る人間として今はあえて「あまり調子に乗らないでよ」と言っています(笑)。

森脇:平野監督らしい愛のあるアドバイスですね。

平野:キスシーンのときは「ここはヒロインの表情を優先して撮る。芳根京子に華を持たせるんだぞ」と言い聞かせ、本人も「分かりました!」と納得していたのに、オンエアされたら「瀧昌さまの顔は見えなかったけれど、あごのラインがきれいだった」という感想が…。本田響矢が持っていきました(笑)。


助演女優賞を獲得した芳森芙美子役、山本舞香さんはいかがでしたか?

平野:山本さんは表情の切り替えがすごく魅力的。凛とした顔からふにゃっとした笑顔になるギャップが面白い。現場ではこちらが「こうやってみようか」と提案すると、一度自分で飲み込んでからすぐに演じてみせてくれました。

森脇:本番でカットの声をかけると「今ので合っていましたか?」って確認してきましたね。芙美子役は、山本さんとしてもこれまでにない新鮮さがあったのでは。

平野:芙美子と深見(小関裕太)の関係を描くことで、なつ美&瀧昌とは対照的な恋愛を作れたのは、全体の構成としても良かったです。


先ほどキスシーンの話が出ましたが、新婚夫婦にとっての「初夜」など、ベッドシーンは肌の露出などをせず、さらりと描いていました。

平野:僕は西香はちさんの原作漫画が好きだし、迷ったら原作に立ち返るようにしていました。宋Pたちと「ドラマでは直接的な表現は出さなくていいのでは」と話し、今回はやめておこうと判断しました。もちろんラブシーンが見たい人はいるだろうし、それがおかしいわけではないけれど、ドラマの世界観には合わないと判断しました。

森脇:初夜は、なつ美と瀧昌が布団に倒れていって画面からフェードアウト…という古典的な感じになりましたね(笑)。僕は個人的に役者が脱いで濃厚なラブシーンを見せられても、という感じなので、これで良かったと思います。

平野:俺たちはそういうタイプの人間なんですよね。あまりラブシーンは得意じゃない(笑)。


改めて「波うららかに、めおと日和」で達成したこと、気づきがあったら教えてください。

森脇:一言でいうと、“丁寧さ”ですね。一つ一つのセリフ、しぐさ、間合い、全てを大切に扱わないと、画が持たない。そこにどれだけの温度を込められるか。その大切さを意識して学びました。

平野:森脇Dの演出した、足でちょんちょんするところなんて、俺には思いつかないなぁと思ったよ(笑)。旅館から見える月が大き過ぎるとか、あえてファンタジックに撮ったところもあるので、そこで鼻につく芝居をされたら、この作品は成立してなかった。キャストの卓越した芝居に助けられました。そして、かまどでのご飯の炊き方やコタツの炭の起こし方など、みんなで調べながらの時代考証も楽しいものでした。また、このチームでこの時代に戻って来られたらいいなと思っています。

(取材・文=小田慶子)
波うららかに、めおと日和

波うららかに、めおと日和

芳根京子主演で、昭和初期を舞台に交際ゼロ日婚の新婚夫婦の甘酸っぱい時間を描く、ハートフル・ラブコメ。なつ美(芳根)は帝国海軍に所属する瀧昌(本田響矢)と婚約することに。しかし、結婚当日、一度も会ったことがない瀧昌は仕事のため現れない。夫不在の中、結婚生活が始まっていく。

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