ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第96回ザテレビジョンドラマアカデミー賞脚本賞 受賞インタビュー

野木亜紀子

普通の、タフに生きている主人公が描けたらと思いました

「アンナチュラル」が、最優秀作品賞をはじめとする6部門を受賞しました。受賞に至った要因はどこにあったと思いますか?
キャスト・スタッフ、みんなが頑張ったことです!(笑)。漫画や小説はそれだけで成立するものですが、映像作品は脚本だけでは成立しません。今作は、本当にみんなの力が合わさってできたもので、誰が欠けてもこうはならなかったと思います。賞を取ることを目的にはしていませんが、本当に良かったなと思いますし、作品のファンの皆さまも喜んでくださると思うので、それがうれしいです。主題歌(「Lemon」)にも恵まれました。
今作は脚本、キャスティング、お芝居が三位一体となった作品だったと感じましたが、もともと法医学をベースにしようというところから誕生したドラマと聞いています。しかし、野木さんが法医学を書かれるのは初めてで、身構える部分はありませんでしたか?
法医学に詳しかったわけではありませんが、もともと理系ジャンルの方が好きなので身構えることはなかったし、以前から人の生き死については思うところがあったので、何か伝えることのできるドラマにできるのではないかと思いました。とはいえ、執筆前はひたすら文献を読み、実際の法医学の現状をひたすら調べるなど地道な作業が必要でした。法医学ドラマはいわゆる事件ものでやり尽くされている感があるジャンルですから、その中で面白くするためにはどうしたらいいのだろうかという点が最も難しかったです。
物語の軸になるミコトは、大きな悲しいバックボーンを背負っているにも関わらず、はつらつとしていることに意外性を感じました。
今作はどうしても人の死が関係するお話なので、そこに耐えられる主人公はどんな感じだろうと考えたとき、普通に幸せに生きている人では響いてくるものがないのではないかなと思ったんです。だからミコトは重い過去を背負っていて、そんな中でもタフに生きているという設定にしました。死は誰にでも訪れることですが、殺されることは普通ではありえない特別なことです。そして、法医学は自死や事故死に見える他殺を見逃さなかったり、第1話で描いた感染症による死を防ぐなど、不条理な死と切り離すことのできない職業です。そして不条理なものというのは何かというと、命を奪われること。だから、他人に命を奪われそうになった過去をミコトには背負わせたいと思いました。
ずっと強いキャラクターだったミコトが、最終話で母親の夏子に弱音をこぼしますね。
ミコトはもともと背負っているものが大きいので、それ以上に凹むことはそうそうないんですよね。ご覧になる方も凹んでいるミコトは見たくないだろうと思いましたし、それに、実際に働いている女性って、日々そんなに泣いていられませんよね? ドラマに出てくる女主人公って、強いけどヘンな人とか、仕事はできないけど頑張っている子など極端なキャラクターが多い気がします。でも、世の中には普通に仕事ができて有能で柔軟性があって、人の気持ちが分かる働く女性って多いと思うんです。そういう普通の、タフに生きている主人公が描けたらと思いました。
今回はあて書きだったと伺いましたが、野木さんが石原さとみさんから抽出した部分はどういったところでしたか?
確かに当て書きでしたが、最終的には監督と役者さん本人が色付けをしていってくださるので、そこまで色濃く反映したつもりはありません。最近、石原さんは女の子らしい役を演じられていることが多かったので、そうじゃない姿が見たいなと思いました。井浦新さんも見たことのない井浦さんを。市川(実日子)さんも最近は映画「シン・ゴジラ」(2016年)のような役柄が多く、それはそれで好きですが、明るくて楽しい役も見たかった。そして、松重豊さんは「重版出来!」(2016年TBS系)で編集長をやっていただいていたので、被らないように。窪田(正孝)くんも最近は激しい役が多かったので今回は静かな役に。ご覧になる方も見慣れないキャラクターの方が楽しいでしょうし、見飽きないだろうなと思いました。結局のところ、自分がその役者さんで見たいキャラクターを描いただけとも言えますが。
“実際”の部分に重きを置いているのだと思いますが、脚本を書かれる際に決して曲げたくないと思う部分はどういったところでしょうか?
きれいごとは書きたくない、というのはありましたね。それから、リアリティーラインをどこに置くか。“実際”のことだけを書いていくとおとなしい作品になります。でもダイナミズムがないと面白さは生まれない。人の“生死”を扱う作品だったので、エンターテイメント性をどのように組み込むかが非常に難しい作品ではありました。
今作では、その「実際を超える部分」はどのような部分で表現をしましたか?
突飛な展開でも、勢いで話を運ぶことはできると思うんです。そのぶん、回収がちゃんとできていれば、許されるのではないかと思います。そのさじ加減は微妙な上に感覚的なものになるので、自分の中でバランスをっていくしかないんですけど。もちろん、周りのみんなにも確認しながら進めていきました。「ここ大丈夫?」とか。しかし今回はプロデューサーも演出家も編成も、止めるより「やっちゃえ」タイプの人ばかりだったので、抑えるよりも背中を押されることの方が多かったように思います。思う存分やらせてもらえて、その点でもとても感謝しています。
続編を期待される方は多いと思いますがいかがでしょうか?
続編ということは「1」を超えないといけないわけですよね。というか、超えないと意味がない。今作は全10話全てパターンが異なるように作っていたんですが、続編を作ったときにまた、手を変え品を変え面白いものが作れるか? キャスティング然り、クオリティー然り、質を保ったものをちゃんと出せるのかが大切ですから、どうでしょう、そう簡単にやろうとは言えないです(笑)。


取材・文=及川静

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