2020/11/07 06:00 配信
――特に「占い」のくだりなどは、台本を読ませていただいてコントの脚本のようなテンポ感なのではと思ったのですが、あのシーンはいかがでしたか?
バカリズム:あのシーンは、僕は単純に面白いと思って書いたんですけど、わりとスタッフさん的にはビックリしたみたいで。部屋の中でただ占いをするだけって、あんまりドラマでは無いそうなので(笑)。
僕はワンシチュエーションの会話劇って散々書いてきているので、自分の中ではそこまで目新しい手法ではなかったんですけど、ただ占いだけで書き始めたら面白いからそのまま行けちゃったって感じで。
お芝居をやっていても、すごくコント的というか。あの回って正直無くてもいい回だから(笑)、基本このドラマに関してはそんなシーンやエピソードはいっぱいあるんですけど、その中でも特に、あそこを見逃しても問題なく入れるくらいの話なので。だからこそ、その無駄さがすごく面白いというか。僕は好きな回ですね。
井浦:大変でしたよ現場は。とにかく笑いを堪えるのが大変で。途中でバカリズムさんが普通に笑い始めたりして、「そこまで自由にやっていいんだな」って。でも、あの回は佐久間由衣さん演じるゆずきが占いをしながら回していくんですけど、だいたいオチに来るのが一馬で、自分は笑うよりもちゃんと傷ついていなくちゃいけなくて。笑いそうなのを堪えるのが本当に大変でした。
バカリズム:僕の役は正直、笑っちゃっても問題ない立場だったので、本当にそういう人たちが占いやったら意外と、一人だけ集中してダメだったらちょっと笑っちゃうんじゃないかっていうのがあったので。現実的に起こりうることであれば、笑おうが噛もうが別に良いなと思ったんで、普通に笑っちゃってましたね。
――今回の撮影の中で、コロナウイルスの影響はどの程度受けられていたのでしょうか。
バカリズム:ちょうど緊急事態宣言が明けて、ぼちぼち各現場でドラマや映画も対策を取りながらやり始めたころから撮影に入っていましたね。
井浦:だいたい7月から8月にかけて撮影していたと思います。
バカリズム:なので、スタッフさんは特に大変だったと思いますね。感染対策をしながら、みんなマスクをして、検温をしたり現場も換気をしたり、通常の撮影よりも相当時間はかかっていましたね。僕らもそこにはちょっと緊張感を持っていました。そこに結構精神的な負担は感じながらやっていたのを覚えています。
――自粛期間中はずっと自宅にいる生活が続いていたと思いますが、その間バカリズムさんはライブが中止になったり、井浦さんはご自身でミニシアターを応援する活動をされていたりしていました。お二人の中で「人生」や「仕事」といったことに対する考え方の変化などはありましたか。
バカリズム:考え方の変化ですか…。僕は毎年単独ライブをやっていまして、自分にとってそれは「本業中の本業」というか、これがあるからこそ他のテレビへの出演や、脚本のお仕事もできているというか、自分にとっての確認作業みたいなところがあって。
ただ、ライブ自体は台本を書いて覚えてっていう作業を全部一人でやっているので結構しんどくて。でも「自分に必要だからやっている」ということがありながらも、今回コロナで中止が決まった時の感覚は、すごく気持ちが楽になったんですよ。
自分でやっていながら「今年やらなくていいんだ」と肩の荷が下りた感じがあったんですけど、でも一ヶ月もすると、「やっぱりやりたかったな~」っていう(思いがこみ上げてきて)。いつもあんなに「しんどい、しんどい」と言いながらやっているライブなんですけど、すごく寂しかったというか、やっぱりライブがないと自分の調子が狂うなっていう。
そこからずっと、(自分の中で)イマイチしっくり来ていない感じはありますね。ライブをやっていた年と比べてそういう思いがあるので、やっぱり自分にはライブがないとダメなんだなとは思いました。
基本的にコロナの自粛期間中も書く仕事はたくさんあったので、家にはいるけどもともと結構外出もせず、仕事以外は結構部屋にこもって書いている時間があったので、そこまで変化は感じなかったというか。なので「今できることをやる」というか、「現場は中止になるけど締め切りは中止にならないな~」と思いながらやっていましたね(笑)。
この「殺意の道程」の原稿直しとかも、まさにステイホーム期間中にやっていたので、それで結構いっぱいいっぱいだったから、あんまり深いことを考えるような時間はなかったですね。
井浦:僕は考え方が変わったというよりも、「考えることができる時間があった」という感じで。予定していた映画の現場がいくつも中止や延期になったりして、まるまる2ヵ月間芝居をしない時期っていうのが、この十数年では多分なかったんです。
仕事も楽しんでいましたし、「どんな表現ができるのか」って突き詰めるためにも、次の現場へ、次の監督へ、次の共演者たちとっていう、そういうものを求めてずっと続けてやらせていただいていたものが、突然2カ月間全く無くなる。そうなった時に、やっぱりいろいろ考えました。
ちょうど「俳優ってそもそも何なのか」みたいなことを考え始めていた時に、全国のミニシアターが閉館するかもしれない、続けることが困難になってきたという話を聞いて、居ても立っても居られなくなって。「俳優たちに何が出来るのか」、そういう思いに繋がっていけたのも、芝居以外のことを一日中考える時間があったことが大きかったですね。
環境がガラッと変わってしまったなと思ったし、良い悪いは置いておいたとしても、そういう今まで後回しにしていたこととか、置いてきてしまっていたようなことをゆっくり考える時間があったのは、自分にとってラッキーだったんだろうなと思います。
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