「エール」窪田正孝&二階堂ふみ、“コロナ禍”乗り越え素敵な夫婦の物語を見せてくれた2人に感嘆
なぜ、こういう展開になったか考察
戦時中のエピソードでは多くの登場人物が亡くなったが、最終週ではっきりとした人の死を描かず、結婚式やオリンピックの開会式などの祝祭を描き、歌謡ショーで締めた。
この理由は、119回で窪田正孝が語った「世界中を未曾有の不幸が襲う中で『エール」という名でドラマをやる意義を裕一を演じながら感じさせてもらいました」、120回でさらに「苦難の日々が続きますが皆さんどうか一緒にがんばりましょう」と声をかけたことからもわかるように、思いがけないコロナ禍によって変わってしまった世界に向けて何を発信したらいいかと考えたすえの選択であろう。
「エール」自体にもアクシデントがふりかかった。コロナ禍によって主要キャストだった志村けんが亡くなったこと、撮影中断、放送休止(本編の放送を休止し副音声付き再放送を行った)、予定回数の縮小と次々と災難が。それでも最後までやりきって、アクシデントを逆手にとり、いままでにないドラマを作り上げたことは称賛に値する。
窪田正孝と二階堂ふみだったからできた
「エール」でも描かれた、池田(北村有起哉)が裕一に曲を依頼してできた名作ラジオドラマ「君の名は」は、様々なアクシデントがあったが、それを逆手にとって工夫したところ、爆発的人気を獲得し、映画やドラマになった(朝ドラにもなっている)。それとアクシデントの規模は違うとは思うが、ショウ・マスト・ゴー・オンの精神が作品を進化させていくことを感じたドラマだった。
主要キャストが窪田正孝と二階堂ふみで良かった。主人公が朝ドラによくある新人だったら、ここまで達者に対応できなかっただろう。ふたりは、シリアスパートもコントパートもバラエティーふうなパートもみごとにやりきり、最後まで、裕一と音としての時間を大事にしていたと感じる。素敵な夫婦の物語を見せてくれた。(文=木俣冬)
●連続テレビ小説「エール」最終回はNHKプラスで配信中。また、NHKオンデマンドでは全エピソードが視聴可能。11月30日(月)からは、杉咲花がヒロインを演じる連続テレビ小説第103作「おちょやん」がスタート