映画「無頼」で組長の妻を演じる柳ゆり菜『“気ぃ強い女やわ~”って井筒さんから言われました(笑)』
12月12日(土)より、井筒和幸監督8年ぶりの新作映画「無頼」が全国で上映(K’s cinemaほか)される。同作は「もはや戦後ではない」と言われた1956年から始まり、母親の顔も知らずに育った主人公・井藤正治がヤクザとなり、激動の昭和、そして平成を生き抜いていく姿を描く。
正治を演じるのはEXILE・松本利夫。正治を盛り立てながらも自身を失わず、腰の据わった妻・佳奈役を柳ゆり菜が務める。
今回は柳にインタビューを行い、作品や役作り、撮影の様子などについて話を聞いた。
「最初は感覚のすり合わせにすごく悩みました」
――出演者の多くがオーディションで決定したと伺ってますが、柳さんもオーディションで出演が決まったんですか?
はい。私もオーディションです。
――合格を聞いたときはどんな気持ちでしたか?
一次審査を突破して井筒監督に会うことになったんですけど、そのときには写真だけで井筒さんが私って決めてくださってたみたいで。だから、もう1回審査を受けるつもりだったのに、そのまま決めていただいた、みたいな(笑)。「もう決まったんですか?」ってビックリしましたね。見た目の雰囲気で選んでくださったみたいです。「役に合うか合わないかだから」って井筒さんはよくおっしゃっていたので。
――井筒監督のイメージ通りだったんですね。
結構ピッタリだったみたいで。この見た目でよかったなって思いました(笑)。
――出演が決まって、最初に台本を読んだときの感想は?
難しい。最初は本当に「これは理解するのに相当時間が掛かるな」って思いましたね。その時代に起こった出来事から調べなきゃいけないと思って。「オイルショック」とか何となく知ってはいたけど、一体どういうことに困って、その結果どういう現象が起こって、人々はどういうことを思ったんだろうということをちゃんと分からないと、時代背景とかをつかむのが難しくて。
――作品中にその時代の社会的な出来事が映されていますからね。
そういうところが、昭和の時代に生きた方々が面白がってくれる部分だと思います。いつもの私だったらサラッと言ってしまうセリフにも全部意味があったりするので、一つ一つのセリフに緊張しながらというか、大切にしないとなっていうプレッシャーはありました。
あと、本当に出演キャストが多いので、最初に台本を読んだときは誰と誰がどうつながってるっていう相関図的なところも難しかったですね。何カ月もかけて、台本を読み解いていく作業をした感じです。
――確かに登場人物は多いですね。
私の出演が決まったときはまだ主要メンバーの何人かしか決まってないような状況で、後から決まった人が誰役なのかを当て込んでいくみたいな形になったので、今まで経験したことがないような作品の作り方になって、すごく刺激になりました。
――佳奈という役を演じて、感じたことはありますか?
今作は本当にリハーサル期間に助けられました。私が家で一人で悩んだってつかめないものがたくさんあったので、みんなで会って実際に何度も演技をしてみて、一緒に役をつかんでいくっていう期間が2~3カ月あったんですよ。何回も分かんなくなりながらやったその期間に現場では本当に救われました。それがあったからこそ、何事もなくというか、スケジュール通りにクランクアップを迎えられたので、あれがなかったらと思うとゾッとしますね(笑)。
――演技で悩んだというのは具体的にどんなところですか?
まず、組長の女房になるっていうことの覚悟というか、心持ちみたいなところだったり、時代背景だったりっていうところで、私との感覚の違いはかなりありましたね。普通の恋愛じゃないですし。自分よりも年上の人が組員として入ってきて“姉さん”って慕われて、みんなの食事を作ったり、明日誰かが死ぬかもしれないという状況で、家族みたいになっている。
そういう1日1日がとても大切で、すごく刹那的に生きている人たちがたくさん出てくるので、紅一点でそこに責任を持っているっていうのは、最初はやっぱり漠然とした感じで「分かんないなぁ」って。最初はその感覚のすり合わせにすごく悩みましたね。
井筒さんの8年ぶりの新作っていうプレッシャーもあって、そこでヒロインを務めるというのは…恐ろしかったです(笑)。現場に行くのも怖かったですし、リハーサルも本当にガチガチになるくらい。演出部も腕のあるとても厳しい方々がたくさんいるので、1日1日が本当に勝負みたいな気持ちで、戦いに行ってる感じでしたね。