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『映画 えんとつ町のプペル』大ヒットの秘密、 STUDIO4℃によるアニメーションのすごさに迫る

2021/02/21 13:00

日本のアニメーションが断然面白い!


――佐野さんがアニメーションの世界に入ったきっかけは何だったんですか?

もともと「スター・ウォーズ」が大好きだったんです。将来的には映画業界に関われればいいなと思っていたのですが、大学では宇宙物理学を専攻しました。海外でCGの勉強をしてみようと思ったのですが、英語もできなかったので、そのとき募集していた国際ボランティアに参加してパプアニューギニアで2年間、物理と数学を教えていました。その後カナダに行ってCGを学びました。当時、そこで海外の友達から「おまえの国に面白いアニメーションスタジオがある」って教えてもらったのがSTUDIO4℃だったんです。

――海外で学んだからこそ気づいた、世界と日本のアニメーションの違いはありますか?

まずは日本のアニメーションの人気の高さに驚きました。海外で勉強したのはディズニーやピクサーのようなアニメーションで、当時は日本がすごいと思ったことはなかったんですよね。北米やヨーロッパのアニメーションは動きに対するこだわりがすごくて、特に北米ではディズニーから受け継がれている教育がすごくしっかりしているんですよ。日本は職人芸みたいなところがあって「見て盗め」という世界だと思うんですが、ディズニーは「天才ではない人でも天才になれるような教育」をしているんです。だから、ある程度まで全員いくようになっていて、そこからは感性がある人が上にいく。日本の場合はできる人はすごくできるようになって、できない人はできないまま、という印象ですね。

――帰国されてから、日本のアニメーションを変えたいという気持ちは出てきましたか?

日本のアニメーションが負けているとは思っていないんです。実際に自分が関わってみて日本のアニメーションが断然面白いと思っています。アメリカや世界で表現できないものが、日本には結構あるんですよね。例えば手塚治虫さんはディズニーに憧れて、ディズニーのような作品を作りたかった。けれどもお金も時間もない中で、通常24フレームのところを8コマに落として制作したんです。人間の目で見られるのは1秒24フレームが限界と言われていますが、そのうち8コマってことは動いているようには見えません。12コマの場合もあるのですが、その場合は“残像”という錯覚が起こるので、動いているように見えます。残像も残らない8コマでは、“補完現象”という、動きの間を想像させる現象を起こしているんです。だから1コマのポーズがしっかりしていないと、動いているように見えないという特徴があります。いまだに日本のトップアニメーターと言われる方々は8コマが好きですね。『映画 えんとつ町のプペル』では、8コマ、12コマ、24コマをシーンによって使用しています。表現したい内容によって、使い分けができるのも日本のアニメーションの魅力だと思います。

――フルCG作品は基本24コマのところを8コマに落とすことで、日本のアニメーションらしく見えるのですか?

ただコマを落とすだけでは、日本のアニメーションらしさは出ないです。現代のフルCG作品の正解がピクサーだとするなら、日本のアニメーションは今まで同様、独自の作風で一所懸命、いい作品を作ろうと努力すればいいと思うんです。作品をよく見せるために8コマで見せるシーンがあっていいし、どのタイミングでどう見せるかの感覚を日本アニメーションは持っていると思います。

『映画 えんとつ町のプペル』より
『映画 えんとつ町のプペル』より(C)「映画 えんとつ町のプペル」製作委員会


――今までの日本のアニメーションの工夫を取り入れたフルCG作品『映画 えんとつ町のプペル』は、ずばり世界で通用する作品に仕上がりましたか?

もちろん通用すると思います。特に海外を意識して作ったわけではないですが、とにかくいい作品を作りたいんです。人を感動させるものって、人間の努力だと思うんですよね。プペルに限らず、クリエイターの思いが詰まった作品は紛れもなくいい作品です。僕らの細かいこだわりは気づかれないかもしれませんが、それでも見てる人は感覚的に受け取ってくれるるものだと思うので。その点ではディズニーに限らず、どこにも負けていないと自負しています。

――最後にあらためて『映画 えんとつ町のプペル』の魅力を教えてください。

普通の作品ではできないような、絵本の世界観が動いている作品です。背景も緻密で、キャラクターもかわいいのですが、アニメーション監督としては「動き」を見てほしいです。フルCG作品というと、派手なシーンや迫力あるシーンのカメラワークなどが注目されがちですが、細かいところまで表現できるのも3Dの魅力だと思っています。人間のふっとしたしぐさ、目の動きなど、アニメって実写の人間の表現力にはかなわないのですが、CG作品はかなり近づけています。動きで表情を見せられんじゃないかと思っていて、今回の作品でもかなりここの表現に力を入れています。言葉がなくても動きだけで、そのキャラクターがどう思っているのか、どういう気持ちで沈黙しているのか、そんなところも見ていただけるとうれしいです。

プロフィール●佐野雄太(さの・ゆうた)STUDIO4℃所属。国際ボランティアでパプアニューギニアで理数科の教師を務め、海外でアニメーションを学ぶ。『ベルセルク 黄金時代篇』三部作にCGIスタッフとして参加し、第三部では共同で絵コンテも手がける。監督作に、短編3DCGアニメ『RedAsh -GEARWORLD』『スキヤキフォース』がある

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

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https://www.kadokawa.co.jp/product/322008000225/

画像一覧
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  • 『映画 えんとつ町のプペル』でアニメーション監督を務めたSTUDIO4℃佐野雄太氏
  • 『映画 えんとつ町のプペル』STUDIO4℃によるプペルのアニメーション資料
  • 『映画 えんとつ町のプペル』パンフレット
  • 『映画 えんとつ町のプペル』より
  • 『映画 えんとつ町のプペル』より。ルビッチとプペル

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