ファンタジーを具現化できる稀有な女優
現実を投影し、社会や時代を鋭く批評するドラマや映画は確かに素晴らしいものだ。けれど、ドラマや映画の役割はそれだけではない。娯楽を追求し、スペクタルとファンタジーでツラい現実を忘れさせてくれるものでもある。
深田恭子は20年以上、見た目が変わらないように見える現実離れした存在だ。極端に言えばリアリティーは皆無。決して表情も豊かではなく、常にキョトンとした深キョン顔。いい意味で“お人形”のようだ。人間の感情の機微を演技によって細やかに表現することだけが俳優のすべてではない。彼女を見ているとそんな当たり前の原点を思い出させてくれる。僕たちは画面を見てその美しさや可愛らしさにただ魅了されたいのだ。そして愛でたいのだ。
深田恭子はそこに存在するだけでファンタジーを具現化できる稀有な女優だ。
文=てれびのスキマ
1978年生まれ。テレビっ子。ライター。雑誌やWEBでテレビに関する連載多数。著書に「1989年のテレビっ子」、「タモリ学」など。近著に「全部やれ。日本テレビえげつない勝ち方」
※『月刊ザテレビジョン』2019年10月号