――収録されているのは、まさに心のままに「note」等で書かれていた文章が元ですが、日々書き記していくという作業は、大江さんにとってどんな意味を持っているのでしょうか?
大江:60年生きていると、感傷的になることもあります。エモーションに浪花節が入ってきたりも。それを、書くことによって整理して、自分の引き出しにしまい込まないとやっていけないところもあるんですよね。自分の頭や気持ちの中に取っておくと、粘っこくてしょうがないというか。そういう自分の中のものすごく濃い感情の澱(おり)を、書くことによって多少鎮火させ昇華させていくんです。
盲腸で腹膜炎を起こしかけたとか、父が亡くなったこととか、その数日後にレコーディングが始まってしまうとか、そういう日々起こるとんでもないことにのたうち回ったりしてもしょうがない。褌を締め直していろんな難題を振りかけてくる人生に笑顔で立ち向かっていくしかない。
――シリーズ3作目、過去2作との違いはどういったところでしょうか?
大江:1冊目は、音大でこんなことがあったという備忘録を、ポジティブな目線で残しておかなければ、という気持ちで記したことからスタートしています。
2冊目までは、ジャズアーティストになろうという強い衝動、ジャズデビューしてからも本当に僕の作る音楽はジャズに聞こえているのだろうかという不安、自問自答が続いていた。3冊目に収録しているのは、僕自身の“Senri Jazz”に気付いていくプロセスです。
2018年に『Boys & Girls』を作ったことによって、過去への逡巡が吹っ切れて、引き出しの中にしまっていた大好きなPOPSを出してみようと思い至る瞬間がありました。
アメリカのFMのパーソナリティーや、プロモーション担当、ラジオプロモーター、そういう人たちの言葉から僕自身がSenri Jazzを広めていくんだということに気付かされていった。なにも大切なPOPSを自分の引き出しの中だけに留めておく必要ははないのではと。
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