俳優・佐藤二朗が原作・脚本・監督を担い、主宰する演劇ユニット「ちからわざ」で2009年に初演、2014年に再演された舞台を、山田孝之を主演に迎えて映画化した「はるヲうるひと」。作品の舞台は、至るところに「置屋」が点在する架空の島。ある置屋に暮らす長男の哲雄(佐藤)、次男の得太(山田)、長女のいぶき(仲里依紗)と、置屋で働く4人の個性的な遊女たち。遊女たちを巻き込みながら、三兄妹の求める壮絶な愛の形が描かれていく。
コメディ作品への出演のイメージが強い佐藤だが、本作では愛を求めてもがく男女の壮絶な闘いを描き切るなど、意外性にあふれた内容で観客をくぎ付けにする。「見る人をあっと驚かせたい」と語る彼の原動力がインタビューから明らかになった。
――「ちからわざ」で上演された舞台を映画化した本作。約5年の歳月をかけて映画化までこぎつけたそうが、どのような思いで企画がスタートしたのでしょうか。
僕は、2008年に「memo」という映画を監督して、原作、脚本、出演も担っていたんですが、当時の製作の人が「久々に自分が書いた脚本以外で面白いと思えるものだった」と言ってくれたんです。彼とまたぜひ作品をつくりたいと思っていたところ、彼から「『はるヲうるひと』を映画化してはどうだろう」という提案があって。舞台も好評で、僕にとってもすごく思い入れのある作品だったし、きっと彼も“佐藤二朗が「はるヲうるひと」を映画化する”ということに意外性を感じてくれていたと思うんです。「なるほど、それは面白いぞ」と思い、映画化に乗り出しました。
――愛を求めてもがく男女の痛みと、そこから浮かび上がるささやかな希望が描かれます。
きっと誰もが大なり小なり、生きづらさや負の部分を抱えて生きているものだと思うんです。僕は人が目に見えて成長する姿にはあまりグッとこないんですが、生きづらさを抱えた人がほんの1センチでも、半歩でもいいから踏み出そうとする姿に惹きつけられる。僕が脚本を書くと、どうしてもそういう話になってしまうんです。負の要因がすべて取り払われるなんていうことはないんだけれど、そういう負の部分も含めて自分だと思えたり、少しでも前を向こうとする姿にこそ、ドラマがあると思っています。
2021年6月4日(金)公開 R15+
配給=AMGエンタテインメント
原作・脚本・監督/佐藤二朗 出演/山田孝之 仲里依紗 坂井真紀ほか