<おちょやん最終回>“千代”演じきった杉咲花、小柄で童顔な体に秘めた圧倒的なエネルギーと演技力

2021/05/14 08:16 配信

ドラマ コラム

【写真を見る】最終回より、千代&一平が一度限りの再共演…!「おちょやん」第115回(最終回)(C)NHK

ハードルの高い“劇中劇”も巧みに演じた


杉咲花は23週間、全115回に渡り、千代の十代から四十代くらいまでを演じきった。

5月7日の「あさイチ」プレミアムトークに出演したときは厚めの前髪のボブスタイルで白いワンピース、鈴のような声で笑い語る姿は少女のようで、ちゃきちゃき大阪弁でしゃべっていた千代とは別人だった。

千代は比較的、おばちゃんになっても若く見えたが、実際の杉咲花と比べると断然違う。いつまでも若く見える元気なおばちゃんを杉咲花は見事に演じていたのである。

もっとも主演俳優が役の人生の長いスパンを演じることは、女性の人生ないし半生を描く朝ドラでは当たり前のこと。たいてい二十代の俳優が役の十代から四、五十代まで演じることを課せられる。

また、主演俳優は、半年間の長期間の撮影で、毎日、毎日、出ずっぱりで体力的にもキツイ。これらの重労働の分、終わったときはぐっと成長もしているのだけれど。「おちょやん」ではこの基本的なハードルのほかにさらに劇中劇という難関が用意されていた。

昭和の名脇役・浪花千栄子をモデルにした千代は人生の大半を俳優として過ごす。そのため千代が俳優として演じる芝居の場面もしょっちゅう出てきた。

初舞台から、代役とはいえ初主演作「正チャンの冒険」、一平との結婚のきっかけになった「若旦那のハイキング」、辛い思い出になった「お家はんと直どん」、ラジオドラマ「お父さんはお人好し」まで何作か劇中劇の場面があって、そのセリフや段取りを覚えることは難儀であったことだろう。

短い場面とはいえ、舞台劇とテレビドラマのナチュラルな芝居とは動きも発声も違う。にもかかわらず、杉咲花は、若い女中やお嬢さん、いじわるな娘に年をとったお家さん、子だくさんの母親まで器用に次々と演じ替えていった。しかもモデルの浪花千栄子の口調にまで近づけていたようなのでやることは山積みであったことだろう。

とりわけ「お家はんと直どん」で千代が演じるお家はんが昔のことを思い出して直どん(一平が演じている設定)にしなだれかかる所作など抜群に巧みであった。

その意味では、一平役の成田凌や、千之助役の星田英利の舞台演技も絶品。後半のキーマンだった寛治役の前田旺志郎も、舞台上では阿呆ボンの滑稽な芝居も堂に入っていた。

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