<おかえりモネ>清原果耶は“初々しさ”と“表現力”が重なり合う奇跡のヒロイン

2021/05/22 08:05 配信

ドラマ コラム レビュー

「おかえりモネ」第4話 登米能を熱心に見るモネ(清原果耶)(C)NHK

清原果耶の登板は奇跡のタイミング

ある意味、朝ドラファンはすでにヒロインの成長を見て来たといえるのである。2015年から6年間、主演ドラマ「透明なゆりかご」(脚本は『モネ』と同じ安達奈緒子)や「蛍草 菜々の剣」などもあり、俳優として着々と成長してきた。

それでも、まだ19歳。未成年の初々しさも残っている。瑞々しい若さに巧みな表現力、この両方を兼ね備えた俳優はいない。どうしたって若さと実力は反比例する。

子役の場合は幼いにもかかわらずしっかりしていても感情の機微までには至れない。キャリアを重ねると、認知度的にも実力的にも初々しさは失われていく。ちょうど、初々しさと巧さが重なる奇跡の瞬間は天体現象で言うと、皆既月食みたいなもの。

清原果耶は滅多にない奇跡の時に、朝ドラヒロインとなった幸運と実力の持ち主といえるだろう。

表情から読み取れる情報量

モネはそんな清原だから可能な、なかなか深みのある役である。わけあって生まれ育った亀島を出て、家族と離れ、ひとり登米で働いている。

その理由とは何か。パッと見は素直で朗らかで優しく感じの良い子であるが、モネは時々ふと憂い顔になる。

森林組合に就職したものの自分がこれから何をしたいかわかっていない不安。それと、過去、地元に何かがあったとき「何もできなかった」負い目を抱えている。

これまでの朝ドラヒロインは自分の意思を明確にもっているし、それを言葉にする人物が多かった。たまに口下手なヒロインもいたが、ナレーションなどで心情を説明してくれた。

だがモネは過去の経験も現在の心情もあまり明確に話さない。彼女の表情から視聴者が何かを読みとる必要がある。清原果耶の表情は空のように、海のように、静かに動いていて、見る者の心を震わす。

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