<インタビュー>入山法子、舞台で“黒い王女”役「観ている人に勘違いされたらどうしよう(笑)」

2021/06/15 22:16 配信

芸能一般

「首切り王子と愚かな女」に出演する入山法子撮影=倉持アユミ

舞台「首切り王子と愚かな女」が6月15日より上演される。架空の王国を舞台に、井上芳雄演じる“首切り王子”と、伊藤沙莉演じる召使い・ヴィリを取り巻く人間模様を描いた“ブラックファンタジー”だ。本作で、召使いに嫉妬心を燃やす王女・ナリコを演じる入山法子に話を聞いた。

──入山さんが演じる・ナリコという役どころについて教えてください。
舞台になっている架空の国の隣国の王女です。井上芳雄さん演じる首切り王子に気に入られようとしている王女で、伊藤沙莉ちゃん演じる召使いに対してライバル心をむき出しにしている…ちょっと黒い女の人(笑)。
──これまでの入山さんが演じてきた役を見ても、あまり“黒い”役のイメージはないのですが、演じてみていかがですか?
めちゃめちゃ難しいです。普段はなるべくイライラしないようにと、ふわふわ生きている人間なのですが、対してナリコは怒りのエネルギーで生きてるような女性なので、まだまだ模索中です。
──普段のご自身とは正反対とのですが、どのように役作りをしているのでしょうか?
ナリコがどういう状況で城の中で過ごしているのか、この城の中でどうやって地位を上げていくのかを考えていくと、やっぱり召使いのヴィリが目障りに感じてくるんですよね。そんな中でヴィリとのやりとりを重ねていくと、自然にヴィリに対する怒りや嫉妬心が湧き上がってきます。恋愛での嫉妬心だったり、誰かを羨んだりする気持ちは、実際の私の中にもあるので、ナリコの気持ちもわかりますし。プライベートではもう恋愛はいいかなって思うくらい(笑)。
──それこそ今までの役のイメージには全くない役柄なので、お客さんも楽しみでしょうね。
そう言ってもらえるとうれしいです。今まで映像のお仕事でやらせていただいた役とはガラッと変わっているので、楽しんでもらえるようにやりきりたいです。入り混じっていく人間関係の中でナリコがどう生きていくかというところにも注目してもらえたらと思います。
──本作の作・演出は蓬莱竜太さん。入山さんは蓬莱さんの作品に出演するのが念願だったそうですが、蓬莱さんの作品のどんなところに魅力を感じるのでしょうか?
蓬莱さんの作品は、人間が生きていく中で他人に見せたくないカッコ悪い部分だったり、今回の嫉妬心のような汚い部分だったり、秘密にしておきたい部分だったり、そういうものを掘り起こしてあらわにしていくんですよね。そういう人間の汚い部分を見せられて、「で、あなたはどう思いましたか?」と突きつけられているような感覚になる。蓬莱さんの作品を観るたびに「今回もすごいものを見せられてしまった」と、毎回衝撃を受けて劇場をあとにしていたんです。役者としても、そういう、人に隠しておきたい、観られたくないものをあらわにしなければならないお芝居はやりがいがあるだろうし、やってみたかった。だから蓬莱さんに会うたびに「出させてください」とお願いしていたんですけど、「合う役があったらね」と言われていて。
──で、今回もらった役が“黒い女の人”の役だったと。
そうなんです(笑)。しかも自分と一文字違いの役名で。蓬莱さんにそういう人だと思われているのかなとか、観ている人に「こういう人なんだ」って勘違いされたらどうしようって、ちょっとドキドキです(笑)。
──蓬莱さんの現場はいかがですか?
演劇というもの自体がお好きな方なので、お客さんへの届け方や作品の見せ方といった技術的なことをもすごく大事にされていて。改めて学ばせてもらっています。特に役者同士の音のバランスをすごく気にされるんですよ。
──役者同士の音のバランス?
声のバランスというか。強さ、高さ、速さ…役者の出す声や音を細かく気にされていて。その調整は面白い反面、すごく難しくもありますね。ほかの出演者に比べて私は舞台の経験が少ないので、そういったところも含めて改めて演劇というものの難しさを感じながらお稽古しています。それこそ共演者の皆さんは本読みの時点ですでに“音”みたいなものができていて。「声だけでこんなに表現できるんだ」とすごく驚きましたし、勉強になりました。
──そんな共演者の方とのやりとりで特に印象的なものはありますか?
やりとりというか…井上さんが美しい! “舞台全体を使ってお客さんに見せる”というのがすごく自然できれいで。それこそ声の“音”もたくさん持っていらっしゃって。勉強になるというよりも、もう稽古中にうっとりしています(笑)。
──ちなみに、入山さんが舞台の本番前や本番期間中などに行う願掛け、ルーティンなどはありますか?
願掛けじゃないかもしれないですが、休みの日でも台本を持ち歩くようにしています。ちょっとでも離れると、自分の中に役が無くなってしまいそうな気がして。
──逆に言うと、休演日は持ち歩くだけで開くことはない?
そうですね、開くと気になっちゃうから。でも台本を開かなくても、頭の中では作中の人たちの声が響いています。そういう意味では、オンオフが器用にはできてないのかも。コロナ禍になる前は、作品が終わったら旅行に行ったり友達と遊んだりして、リセットして次の作品に向かうようにしていました。やっぱりこれだけ長い期間一緒にいると役に愛着が湧いて離れがたくなっちゃうんです。
──しかも「首切り王子と愚かな女」では、名前も一文字違いですしね。
そうなんです。だからこそ、彼女の生きる道をきちんと生きねばと思っています。
──では最後に改めて「首切り王子と愚かな女」の見どころを教えてください。
こういう状況下なので、以前にも増して能動的にならないと、劇場に足を運べないと思うんです。そういう意味でも、観終わったときに「観に来てよかったね」「楽しかったね」「明日も頑張れるね」と思ってもらえるような、エネルギーのある作品にしたいと思ってみんなでお稽古をしています。ファンタジーの世界ですが、私たちに似た住人たちが生きている物語。その中に蓬莱さんがいくつも宿題を散りばめているので、宿題を持ち帰りつつも、ワイワイやっている私たちの世界を楽しんでもらえたらと思います。

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