――今作では、これまでの作品と同様、脚本をご自身で手掛けられていますよね。監督と編集、それに加えて脚本を書くことはやはり大変でしたか?
脚本を書くことは、映画づくりの中で一番苦しい部分だと思うんです。もちろん、脚本の決定稿を作った状態で現場へ行ったのですが、撮影の最中に、子どもたちや小川未祐さんの姿を見ながら、セリフを変えたり、追加したりと、脚本にとらわれずやっていました。まあ、大変ではあったんですけど、それが結果的には良かったかなとも思います。
――役者としても活動しているからこそ感じる、作り手に回った時のやりやすさなどはありますか?
監督をしている時は、極力“監督”に集中しようと心がけています。役者である自分とは分けて考え、監督業に取り組んでいますが、とはいえ、自分が今まで役者として経験した演出で「いいな」と感じたものは、自然と取り入れているかも知れません。あとは、現場でどこまで役者さんに干渉してどこまで委ねるのかという線引きは、自分が役者をやっているからこそ、感覚として掴みやすいという側面もあります。
――今作、ご自身は出演されていませんが、いずれ、「監督・小川紗良、主演・小川紗良」の長編映画を手掛けてみたいですか?
学生の頃は、自分で撮って自分で出て…というのをやっていたのですが、かなり現場が混乱するというか…。やっぱり、監督の視点と役者の視点って全然違うので、それを現場で行き来するっていうことがすごく難しくて。それに、全部自分でやってると世界が狭まっちゃうかなとも思います。監督の時はできるだけ監督業に専念して、お芝居は人に委ねるほうが面白いです。だから、自分で撮って自分で出てというのは、今のところ、考えていません。
――ちなみに、作品のアイデアはどんな時に思いつくことが多いですか?
私は何か降ってくるとか、ひらめくっていうよりかはじわじわ自分の中でテーマが広がっていくことが多いです。今回でいうと、小川未祐さんと再会して話をしたとか、そういうきっかけがあってずっと考えていたテーマが、作品に結びつくみたいなイメージですね。
6月25日より全国公開
幼い頃より児童養護施設で暮らす18歳の高校生・花(小川未祐)が施設で過ごす最後の夏、自分と似た境遇を持つ一人の少女・晴海との出会いを通して、自分の過去と向き合い、成長していく物語。