「恥ずかしい思いをしたんですけど、それが採用に(笑)」
――監督の小林勇貴さんとは今回が初のタッグとなりますが、どのようにお話をされたのですか?
ニューヨークにいるときからリモートで打ち合わせをさせていただきましたし、衣装合わせのときもかなり話しました。それから、この作品は毎話、本読みがあって、かなり細かく各話の説明を受けたので、すごく丁寧に作られている印象を受けました。監督の思いがとても強くて、どう撮るかということも含めて、かなり具体的にイメージされていたので、そこまで細かくできているなら僕はついていくだけだなと思いましたし、ついていきたいとも思いました。監督の明確なビジョンにできる限り従うという感じです。演じながら、こんな言い方をするとかなりエグくなってしまうなと思うこともあったのですが、逃げ場がないと感じるぐらいの言い方を求められたので、酒野は相手に救いを与えない人物なんだなと思いました。
――その一方で、“きゅんポーズ”をしたり、英語はネイティブの発音だったり、笑わせる演出もありました。
そうなんですよね(笑)。脚本に書いてあるものもあれば、監督から提案されたものもありましたし、僕も持ち込めるものは持ち込もうと思って、カタカナのところは英語っぽく発音してみたり…。ギャグかというぐらい舌を巻いて言ってみたら採用されたのもありました。でも、実は本読みの時にカタカナを普通にカタカナ発音で言えず、英語の発音になってしまって、それを見た監督に「そのままいきましょう」と言われたんです。第3話に「キャプテン・アメリカ」というセリフが出てくるんですけど、ふと英語発音になってしまって、すごく変な奴になっちゃって(笑)。恥ずかしい思いをしたんですけど、それが採用になりました。カタカナが普通に言えないというのはまさかの盲点で、自分でも驚きましたが、完成したものを見たら、酒野のキャラクターと相まっていい意味で変になっていたので良かったです。
――その酒野はキャラクターが見えない人物ですが、どのように役作りをしたんですか?
最初に聞いたのは、「笑ゥせぇるすまん」の喪黒福造や、「世にも奇妙な物語」のタモリさんのような水先案内人でした。“だから言ったでしょ。人間って愚かだね”というような立ち位置の人物。かなり謎めいているし、各話のゲスト主人公が転落していくことを知りながら話しているところもあったので、全てにおいて達観しているようなキャラクター作りをしました。彼の人間味は排除して、かなりサイコパスというか、異様な雰囲気を意識しました。それが終盤にはガラリと変わるんです。中盤までと繋がらないのでは?というぐらい違うので、作品を2本撮ったような気持ちでした。映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のレオナルド・ディカプリオじゃないですけど、監督はそういう壮大な人間の栄枯盛衰を描いた作品をイメージしていたようです。