清原果耶は多様化する朝ドラにふさわしい
やたら明るかったり、やたら暗かったりする極端な演技よりも、明るさと暗さが混ざったような演技が演じるに当たって難易度が高いもので、俳優の力の見せ所になる。
スイッチの入と切だけのライトより、明るさの度合いが調整できるライトのほうが精密に作られていることが少なくないようなものである。
以前の朝ドラヒロインは新人を選ぶことが多く、そうすると新鮮さ、ピュアさが重視され、どんな時でも明るく、爽やかに笑顔を失わずにいることで視聴者の希望になっていたわけだが、最近の朝ドラヒロインはある程度実績のある俳優へのオファーが増えてきたことで、新人ならではのフレッシュさだけではない演技の深みも求められるようになってきたように感じる。それに伴い朝ドラの内容が多様化してきた。
清原果耶は多様化する朝ドラにふさわしい俳優である。朝ドラにはじめて参加した「あさが来た」(2015年度後期)では幼くして家族と離れて女中として働いている苦労人役で、その忍耐はある意味「おしん」的であった。だからなのか非常に視聴者から応援された。
次に登場した「なつぞら」(2019年度前期)では、またまた忍耐する役。今度は、結婚し子供を産んだが、夫にほかの女性ができたため女手ひとつで子育てしながら小料理屋の女将になるという大人の女の苦労を演じた。こちらもひじょうに好意的に受け止められた。
女性の苦労の歴史をすでに朝ドラでひと通り演じてきた清原が満を持して「おかえりモネ」では、女性に限らない、人間誰もが抱える、生と死が繰り返される中でどう生きるべきかというような深いテーマを託されているように感じる。
それは過去2作の朝ドラ「あさが来た」「なつぞら」の間に、ドラマ10「透明なゆりかご」(2018年)という産婦人科医院で働く主人公が様々な人たちの出産を通して生を見つめる役を演じて高い評価を得た、その実績を信頼されているからであろう。
百音は過去に受けた悲しみを自分なりに受け止めて、これから先、どうやって生きていくのか。気象予報士という天職(?)を得て、これから東京で新たな人生を歩んでいく。清原果耶が今度はどんな表情を見せてくれるか楽しみに見たい。