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芸人パーソナリティが「家族トーク」も…深夜ラジオが“マイルド化”した背景

2021/08/26 08:40

田中裕二(左)と矢部浩之
田中裕二(左)と矢部浩之 ※ザテレビジョン撮影

背景にタイムフリー視聴の定着…社会人世代のユーザーが増加


芸人パーソナリティがラジオで子どもの話をよくするようになった背景には、いったい何があるのだろうか?

まず、単純にパーソナリティが年齢を重ねたことだ。昔は人気番組も2~3年で終了することが一般的だった。伝説の番組「ビートたけしのオールナイトニッポン」でさえ10年で終了しており、しかも番組末期になるとたけしは度々欠席していた。また、飛ぶ鳥を落とす人気だったウッチャンナンチャンは6年、とんねるずは7年で、「オールナイトニッポン」が終了している。

一方、現在ではJUNKのすべての番組と、オールナイトニッポンはナイナイ、オードリーが10年以上続き、長寿番組と化している。以前と比べると、深夜のAMラジオは「数年のうちに終了し、また次の旬のタレントがパーソナリティを務める」いう新陳代謝が薄れてきた。長く番組が続くことで、スタート当初は独身だったパーソナリティも、結婚、子ども誕生と人生の一大イベントを経験し、ライフステージが変化していく。その過程で若かったときの“毒”も抜け、トークの内容も変わってきて当然だ。

そして、聴取環境の変化。かつてラジオはリアルタイムで聴くことが一般的だった。もちろん、カセットテープに録音するなどの手段がないこともなかったのだが、チューニングや電波の関係上、綺麗に録音できないこともざらで、なにより手間がかかった。しかし今はradikoのタイムフリー聴取機能が登場したことによって、時間と場所を選ばずにクリアな音でラジオを聴くことが可能だ。事実、1月30日にradikoが実施した同サービスの聴取実態に関する調査によると、ライブ聴取派が33%なのに対し、タイムフリー派は67%を占めている。

また、総務省が発表した令和3年版「情報通信白書」に明記されている「主なメディアの平均利用時間と行為者率」におけるラジオ聴取の行為者率を見ると、2020年における10代と20代の行為者率は、2016年から下がっている。しかし、2020年の30代と50代は、2016年と比べて率を上げており、30代以上の世代は増加傾向にあることが見て取れる。

以上のことから、昔は学生を中心とした若い世代が夜更かしをして聴いていた深夜ラジオだが、現在はタイムフリーなどのおかげで、通勤時間や仕事の隙間時間などを利用して楽しむ社会人のリスナーが増えていると考えられる。リスナーの年齢層が高いことも、パーソナリティが子どもの話をしやすい要因の一つになっている。

「家族」はエピソードトークの宝庫


さらに、最近ではSNSの普及により、失言をしてしまえば、あっという間にSNSで拡散され、ネットニュースになる。その結果、パーソナリティが謝罪をしたり、最悪の場合、番組終了に追い込まれることもある。以前の環境とは違い、深夜のラジオも決して“治外法権”ではないのだ。

そのうえで、芸人の深夜ラジオに求められるものは、むろん笑いだ。そのため、フリートークの話題選びが重要になってくる。とはいえ、週1ペースで毎回トークを考えるのはなかなか大変であり、毎週面白い事件が起きるわけでもないので、「日常」からエピソードを引っ張ってくるしかない。そういう意味では、子どもがいるパーソナリティが子どもの話題を挙げることは必然といえる。

以上をまとめると、リスナーの多くが同世代で内容に共感しやすいこと、コンプライアンス意識が高まり、そのうえで面白い話が必要であることから、子どもがいるパーソナリティにとって、トークのネタに子どもの話を持ってくることが一つの最適解になっていると考えられる。

特に長くラジオを続けていると、パーソナリティ側のライフスタイルにも大きな変化があり、パーソナルな部分をオープンに話すことで、親近感を覚え、結果的に長く応援してくれるリスナーが増えるといった側面もある。今後はこどもの成人、自らの還暦報告、孫の誕生を報告するのが、芸人のラジオで当たり前になるのかもしれない。

文=こじへい

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

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