明暗を分けたコインランドリー
79話、80話では、正反対の亮と菅波の百音をめぐる明暗が描かれた。場所は同じコインランドリー。
亮は百音の腕をつかみ「わかってんでしょ」と挑発するように言う。自分への気持ちがなくてもいいから一瞬だけ慰めてほしいとすがる亮を百音は毅然と拒む。亮もそれ以上は踏み込まなかった。やっぱり紳士的である。
数日後、菅波がコインランドリーに現れ、百音を抱きしめることに成功する。「わかってんでしょ」と自分の気持ちを百音に突きつける亮に対して、菅波は「どうしたの?」とふいにタメ口でそして優しく百音の様子を聞く。
亮は喫茶店で百音に「座れば」と言うが、菅波はコインランドリーで「座っていいですか」と聞く。百音の腕を掴んで引き寄せた亮と、百音に手を触れられてそこから抱き寄せた菅波。
ひとつひとつが対比されているようで切なくなる。菅波と百音はこのうえなく微笑ましい関係だが、大好きな妻がふいにいなくなってしまったことで心が壊れてしまった父の姿を見て人を好きになることをこわがる亮にも、そんなことを言わずに幸せになってほしい。
朝ドラには真面目で誠実なヒロインの相手役は定番だが、亮のように刹那の欲望を吐露してくる人物は新鮮。
そういえば「あさが来た」では、あさの夫の新次郎を慕うあまり「めかけでもいい」と清原果耶演じる女中・ふゆが真剣にすがっていたことを思い出した。彼女の場合は刹那というよりは健気だったのだが。
清原は今回、本命でなくてもいいとすがられる役になったのだと思うと感慨深い。恋にはいろいろな形がある。