最終回直前でさらに暴走する役を怪演
その後、菊乃が成吾と高校のクラスメートで、初恋を育んでいた成吾と早梅のことをずっと見ていたことが明かされた。本当は成吾に思いを寄せていたのだが、2人の仲を取り持とうとしたときに事故に遭い、成吾の前から姿を消した。それから整形をして、芸者として成吾の前に現れたのだった。
成吾と関係を持っても、その思いが通じたわけではない。そんな悲しみが菊乃を暴走させてしまったのか。第9話ラストでは、早梅を守るために菊乃の暴走を止めようとした壱成に、ようやく本音を打ち明けた。
「早梅さんをもっともっと傷つけたかったの。もし早梅さんと成吾が結ばれた後に私の存在を知ったらきっとショックを受けたでしょ。彼女が苦しめば苦しむほど私は楽しくて仕方なかったの。あの女が幸せになるのなんて絶対に許さない」
夜の神社に灯された赤い光に浮かび上がる不敵な笑みとともに、明らかになった歪んだ感情は、視聴者を震え上がらせた。さらに、菊乃の言葉に怒って胸ぐらをつかんだ壱成にスタンガンを当てて気絶させてしまった。
スタンガンといえば、第6話ですがりつく正弘にも使用していた菊乃。大人女子が持つおしゃれな小さめバッグからスタンガンとはと驚いたが、再びの衝撃だ。
AKB48グループのひとつ、名古屋を拠点にするSKE48のメンバーだった松井。ドラマデビューは、2010年に放送されたAKB48グループのメンバーが出演した「マジすか学園」(テレビ東京系)で、少年院帰りで残酷にけんかを楽しむという狂気の役“ゲキカラ”を怪演した。
本作でも普段の透明感のある雰囲気は潜ませて、原作同様にラブコメをホラーにする菊乃を怪演。壱成に「ヘビみたい」と言われた狂気の役どころが見事にハマった。時折見せたうつろな目も忘れられず、抱える闇の深さが表れていた。
次回9月14日(火)の放送が最終回となるが、「危害を加える」を実行してしまった菊乃。菊乃が救われてほしいと思いつつも、松井のさらなる振り切った演技も楽しみだ。
(文=ザテレビジョンドラマ部)