「第16回日本ホラー小説大賞」受賞作は選考委員も驚がくの傑作!!

2009/11/14 21:54 配信

宮ノ川顕著の「化身」(角川書店)の装丁

宮ノ川顕著の「化身」(角川書店)の装丁

第16回日本ホラー小説大賞の贈呈式が、10月30日に都内で行われ、大賞受賞作「化身」(「ヤゴ」を改題)の著者・宮ノ川顕氏、選考委員の荒俣宏氏、高橋克彦氏、林真理子氏らが出席した。

日本ホラー小説大賞(主催=角川書店)は、'94年の第1回佳作に坂東眞砂子氏の「蟲」が入選し、翌年の第2回では瀬名秀明氏の「パラサイト・イヴ」が大賞を受賞するなど、歴代受賞作に多くの話題作が名を連ねる作家デビューの登竜門だ。

今回、大賞を受賞した「化身」は、日常に疲れ果てたサラリーマンが主人公。逃げるように南の島へバカンスに旅立った男は、ふと見付けたカブトムシを追って密林へと分け入り、そこにたたずむ深い池の中に落ちてしまう。耐え難い空腹と孤独、死の恐怖に襲われながらも、男は心も体も少しずつ環境へ順応していく、という物語だ。絶望的な状況に放り込まれた平凡な男が、そこで発揮する驚くべき生命力と生への執着心が心理的恐怖をあおり、男の体に起こる変化の描写が視覚に伝わる恐怖を呼び起こす短編作品に仕上がっている。

選考委員の高橋氏が「貴志祐介氏の『黒い家』、岩井志麻子氏の『ぼっけえ、きょうてえ』、恒川光太郎氏『夜市』などと出合った時と同等の興奮を味わった。ホラー小説の系譜に風穴を開ける、記念碑的な異色作」と評すなど、選考委員3氏が認める大型新人の登場となった。

贈呈式で宮ノ川氏は、「受賞の連絡を受けた後、初めて自分は小説家だと名乗ったのは、とある駅で職務質問をされた時でした。初めて編集者と待ち合わせをしたせいで落ち着かない気持ちだったのか、もともとの風ぼうのせいで怪しいと思われたのか、『ご職業は?』と問われ、『小説家です』と答えると、相手は相ぼうを崩して去って行きました。今後はこの小説家という道を、鉄路のようにどこまでも、まっすぐに進んでいきたい」と喜びとユーモアを交えて語り、会場を沸かせた。

同賞では大賞のほかに、長編賞を三田村志郎氏(てえし改め)の「嘘神」、短編賞を朱雀門出氏の「今昔奇怪録」(「寅淡語怪録」を改題)がそれぞれ受賞した。

また、今回の贈呈式では、新たな文学賞「山田風太郎賞」の創設も発表された。同賞は、戦後の日本を代表する大衆小説家、故・山田風太郎氏の独創的な作品群と大衆性、ノンジャンル性、反骨精神など、氏が貫いた作家的姿勢への敬意を礎に、有望な作家の迫真を発掘顕彰するため、財団法人角川文化振興財団と、角川書店が創設。第1回山田風太郎賞は、'09年9月1日から'10年8月31日までに単行本として発表された文芸作品が対象となり、'10年10月上旬に受賞作が決定する予定。赤川次郎氏、京極夏彦氏、桐野夏生氏、重松清氏、筒井康隆氏といったそうそうたる作家陣が選考を行う。