家を出た瞬間からファンの皆様のヒーローでありたい
――宙吊りパフォーマンスで大変なことは何ですか?
正直、身体への負担は大きいです。長時間宙吊り状態を維持し、その中で歌い踊り、純度の高いパフォーマンスをするのですから。ただ、ありがたいことにやっとここ数年、「霧島天介といえば、宙吊り」と言われる状況になってきました。ブロードウェイの話ですが、シアターには華やかな看板があり、訪れた観客はまずその看板に目を奪われます。これは演者にも同じことが言えます。その演者にとって看板となるイメージが大切なのです。霧島天介にとっての看板、そして、「ビートジャーキー」にとっての看板、それは宙吊りなのです。
それに僕は潔癖症なんですよね。劇場の地面はけっこう汚いし、臭いし、変な毛とかも落ちているし…いろいろな菌がいると想像すると宙吊りの方がお芝居に集中できるんです。僕は家を出た瞬間から霧島天介のスイッチを入れます。宙吊り状態で劇場へ移動したり、食事をしたり打ち合わせをしたりすることも多いです。だって僕は家を出た瞬間からファンの皆様のヒーローでありたいから。
――霧島さんが理想とするミュージカルはどのようなものなのですか?
人が生きていく上で、音楽って絶対に必要だと思うんです。「ビートジャーキー」をやっていると毎年思うんですね。世の中からビートが乾いた時、いわゆる枯渇した時ってどうなるんだろうって。人間は生きるためにビートを刻んでますよね。母親から生まれてきた段階で鼓動というビートは刻まれている。でも、音楽が枯渇してしまった世の中って人の心も絶対に乾いてジャーキーになってしまう。僕はそうはさせたくないんです。「ビートジャーキー」は、そんな乾き切った人の心に水分、潤いを与えたいという気持ちが発想の出発点かもしれません。