「アフリカの密猟問題を知るきっかけにしてほしい」作者の込めた思いとは
ーー“密猟”をテーマに漫画を描くことにしたきっかけや理由を教えてください。
2年ほど前に太田ゆかさんという日本人唯一の南アフリカ共和国政府公認の女性サファリガイドの方をテレビで拝見したのがきっかけです。私自身、野生動物は以前から好きだったのですが、保護活動というものには特別積極的ではありませんでした。しかし、その番組でゾウやサイなどが密猟により絶滅の危機に瀕していることを恥ずかしながら初めて知りました。また、密猟者から身を守るために銃まで携行し、文字通り命懸けで保護活動を続ける太田さんを見て、自分でも何かできることはないかと思い、アフリカの密猟をテーマにした漫画を描いて、現状をより多くの人に伝えようと決意しました。
しかしながら、当時お付き合いのあった出版社の担当編集の何人かに「アフリカの話を考えていますからプロットだけでも見ていただけませんか?」とお伝えたものの、おしなべて反応は芳しくありませんでした。考えてみれば遠いアフリカの話、なおかつ保護活動の話などは想定する読者層からは外れており、ヒットする見込みも薄いため、商業的な利益を追求する出版社では連載という形では難しいのだなと感じました。
しかしどうしても諦めきれなかったので、原稿料をいただいている他作品の制作を行う合間に、コツコツと描いたものを電子書店で自己出版するという方法で世に出そうと決めました。完結までのプロットは決まっているのですが、原稿料が無い作業なので少しずつしか進められません。作中のセリフのフォントや、電子単行本のブランクページ、デザイナーの方への表紙や奥付の依頼も全て自分でやっています。なかなか筆が進まず、もどかしい思いの毎日ですが、どれだけ時間がかかっても最後まで絶対に完結させて、少しでも多くの人にアフリカが抱える問題を知ってほしいという思いで描いています。
ーーこの作品を描くうえでのこだわりはありますか?
「アンガーデッド」は、ただ動物の保護活動をそのまま漫画にするのではなく、アクションや人間同士の葛藤を劇中に織り込むことにより、娯楽作品としても鑑賞に耐えられる作品にしていきたいと考えています。理由は、もともと保護活動に興味の無い方々にも広く鑑賞してもらい、保護活動を始めるきっかけにしてもらいたいからです。また、一方の意見だけを作中で押し付けるのではなく、さまざまな意見があることも描写していきたいと思っております。ただ、保護活動の水増しや、事実と反する密猟の実態を描写するのは違うと感じていました。書籍などでは勉強したつもりですが、専門家の意見が聞きたいと思うようになってきました。そんな時、サファリガイドの太田さんがクラウドファンディングでサイの角を守るプロジェクトを立ち上げたと知り、参加させていただくことにしました。そのプロジェクトを通じて太田さんと会話させていただくことができ、作品も見ていただくことができました。結果として太田さんに「協力」という形で資料提供や、誤った情報がないかをチェックしていただけるような体制をとることができるようになりました(多忙な中、ご好意での協力です)。
あくまでもフィクションではありますがアフリカの現状を正しく描写し、エンターテイメント性が出る作品にする。それが一番のこだわりです。
ーーこの作品のなかで、描くのが特に難しかった場面やセリフなどはありますか?
それぞれのキャラクターの意見が押し付けがましくならない範囲で、感情を出して葛藤を描かなければいけなかったところです。とくに敵役であるギデオンのセリフとトーンは慎重に設定しました。
ーー今後の展望や目標をお教えください。
ゾウやサイが絶滅してしまう前に、できる限り早く物語を完成させ、多くの人に読んでもらうことです。そして、アフリカの問題に対して反対でも賛成でも、当たり前のように環境保護問題が日常会話に出てくるぐらい、認知度を上げられればと思っております。
ーー作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
少しずつですが確実に前進しておりますので、どうか長い目でみていただければと思います。