香川県在住の川原恵美子さんによるYouTubeチャンネル「田舎そば川原」。そば店を営む川原さんの料理の知恵やレシピを紹介しており、チャンネル登録者は現在約32万人を超えている。「そうめんゆでるな!」のレシピ動画が約420万再生とバズり、御年75歳にしてさまざまなメディアから取り上げられ書籍化もされる人気YouTuberとなった川原さんに、動画配信を始めたきっかけをはじめ、活動で伝えたいことなどを語ってもらった。
注目のYouTuberは75歳。「料理の知恵を若者に伝えたい」
「目玉焼きは冷やしながら焼くとおいしい」「そうめんは茹でない方がいい」そんな常識を覆す料理のコツを紹介するYouTubeチャンネルが注目を集めている。開設1年で登録者数は32万人を超え、密かに動画を見ていたマツコ・デラックスによって「週刊さんまとマツコ」(TBS系、9月5日放映)で紹介された。実際にスタジオで作って試食した明石家さんまとマツコは「おいしい!」「(これまでのやり方で作るのと)全然違う」と驚愕した。
チャンネル名は「田舎そば川原」。配信しているのは香川県まんのう町在住の川原恵美子さん(75)。どこまでも田園風景が広がるのどかな町で、農家の主婦として長年、大家族を切り盛りしながらいかにムダなく材料を使い、おいしく料理するかを工夫してきた。手打ちのそばが評判になり、周囲から要請される形で、15年前から自宅の一角で「田舎そば川原」を営んでいる。
昨年2020年、「今まで作ってきた料理レシピを若い人たちに残したい」という思いを、常連客の地元テレビ局員に相談すると、「YouTubeはどうでしょう」と提案され、チャンネル開設に至ったという。
「そうめん ゆでるな!」がバズり、「週刊さんまとマツコ」に出演
「未知の世界。でも、おもしろそうだからやってみようと思ったの(笑)」と、川原さん。2020年8月15日「みょうがの甘酢漬け」でデビューした。再生回数は20回程度だったが「20人もの人が見てくれた!」とうれしかったと語る。そこで次々に地元食材をふんだんに使った昔懐かしい季節の漬物、煮物、ご飯物、おやつなど郷愁を誘うレシピを配信していくと、たちまち再生回数が伸びていった。「しゃべるのが下手なのはしょうがないけれど、作り方をちゃんと伝えたくて、伝わる方法を考えて精一杯やらせていただいています」というのがモットーだ。
先述した「黄金の目玉焼き」が配信されたのが2021年3月。フライパンに静かに卵を割り入れ、火から数回おろしながら加熱すると黄身の中まで均一に火が通り、弾力のあるきれいな目玉焼きになることを紹介して評判になった。そして、同年6月、そうめんを茹でる極意を紹介した「そうめん ゆでるな!」が再生回数427万回(2021年10月現在)とバズる。茹でずに沸騰させた湯に入れて5分間余熱で調理する調理法で、そうめんは時間がたっても粘り気が出ず、さらりとしたまま固まらない。従来の常識を覆すレシピだった。
「実家のおばあちゃんのようで癒やされる」と人気、動画から書籍化も決定
そのほか、動画では、味噌汁に1~2滴薄口しょうゆを入れると味が引き締まる、錦糸卵は一度卵液を漉すとふわふわに仕上がるなど、長年の経験から得た、知っているようで知られていない料理のコツが紹介される。レシピと同時に、まったりとした讃岐弁の語り口調での解説が「実家のおばあちゃんを思い出して癒やされる」などと人気を集めている。「料理は芸術作品だから自由に作ってええの」など時折発せられる名言も共感を呼び、料理中に塩と砂糖を間違えて慌てる様子など川原さんのお茶目な一面もそのまま配信されているのも魅力だ。
未発表のレシピも含め、川原さんの得意料理とおいしさの秘密を解説した『「田舎そば川原」恵美子さんの料理帖』も2022年1月に刊行予定。「たくさんの人からの声を読むのが楽しいし、私も勉強になっています」(川原さん)。動画を見た視聴者から寄せられる意見を読み、料理に関する質問に丁寧に返事をすることも“やりがい”のひとつのようだ。
川原恵美子(かわはら・えみこ)さん。香川県まんのう市在住。田舎そば「川原」店主&YouTuber。1946年生まれ。21歳で結婚し、2男を育て、農業を営みながら夫の親族も含めた大家族を切り盛りする。手打ちそばが評判になり、周囲に押される形で2006年「田舎そば川原」を開店。1日1組限定の民宿も営業中。2020年8月15日からYouTubeで「田舎そば川原」を動画配信中。
■田舎そば川原 恵美子さんの料理帖
1540円(税込)
1月31日(月)発売