亀梨和也さんが「正体」の主人公を演じられると聞き、是非またご一緒したいと即答しました。その理由は、「事故物件恐い間取り」での、亀梨さんの、演じる役を「できるだけ深掘りしよう」という真摯(しんし)な向き合い方、現場での私たちとの、クリエイティブな協働ぶりにほれぼれしたからです。
撮影前に行うキャメラテスト(通常は代役を立てます)に亀梨くん自ら申し出てくれ、参加してくれたのにも感銘を覚えました。この真摯(しんし)さと共に、現場では自然体にリラックスして居てくれて、一見大変そうな場面もスムーズに行き、私の求める密度の濃い演技もしっかりとやっていただきました。監督の求める演技を、一切迷わずに表現しようとしてくださる稀有な俳優さんだと思います。
今回の「正体」では、「脱獄した死刑囚」という非常に特異な存在で、自分が何者かを変装等で必死に隠しつつ日本各地を転々とし、出会った人々と「人間的に」関わり合い、時として彼らの抱える問題を解決さえしてみせる。それゆえにひた隠すべき『正体』が暴かれそうになる…一見矛盾する行動を取る主人公ですが、彼は自身が置かれた苛酷極まる境遇にも関わらず、現代日本人が忘れがちな、「他者への共感力」が非常に強い人物なのだと思います。
決して単純明快に演じられる役ではないですが、亀梨さんは、主人公の鏑木が「正体」を隠す=見た目だけでなく、設定に合わせて、話し方や「性格」までも劇的に変化させていくのを、チャレンジしがいのあると楽しみにされているように感じます。
それぞれの「変装」の高い質を追求し、各キャラクターをリアルに掘り下げて、「確かにいるな、こういう人」と視聴者の方々に納得していただく努力を亀梨さんと共にしたいと思います。その奥に「鏑木」のヒューマンな「正体」がゆっくりと、でも鮮明に浮かび上がってくるような作品を目指したいと思います。
視聴者の皆さんには、主人公(=脱獄した死刑囚)に感情移入してください、とはお願いしづらいので(笑)、各話で出会う人物たちに思いを寄せていただきたく思います。彼らが抱える「人間的な問題」を主人公は主体的に関わり解決してみせる…しかし、その「密接な付き合い」を通して、彼らは、主人公が全国指名手配中の死刑囚らしいことに気づき始める…「そんな馬鹿な!あの人が!?」と叫び出したい思いを抱えつつ、彼らは通報すべきか否か、狂おしく迷う…。
もしも自分にとても親身になってくれた新しい友人が、『全国指名手配犯』だとしたら…あなたはどう行動するか? このサスペンスフルでエモーショナルな設定を存分に堪能していただきたく思います。
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