「ドン・ジュアン」の稽古場で2人が感じたこととは?
真彩:私は圭吾さんをエンターテイナーだと思っているのですが、ご自身はどうありたいと思って舞台に立たれてきたんですか?
吉野:そうだなぁ、人が真似できないことをやりたいってずっと思ってきたかな。
作品をやる時、全体を見てこの役柄はどうあるべきかって想像して…。俺は、アニメとかビジュアルで見えるものをイメージに結構取り入れたりするんだよね。
真彩:わかります!
私は舞台を観たお客様の想像が、さらに膨らむようにするにはどうしたらいいかというように考えるんですけど、結構感覚的な部分も多いんですよね。「こんなものがあったら」っていう理想的なものを思い描いてやっています。
吉野:そうだね、あとはやっぱり偶然っていうのもあるね。色々試している中で、「あっ!これだ!」ってなることもしょっちゅうある。
真彩:「ドン・ジュアン」の稽古中、圭吾さんが毎日フラメンコ板をお持ちになっていて、練習をしていて…。その音が聞こえてきた時、物事に対する取り組み方が本当に情熱的な方だなって思いました。
吉野:だって、できるだけ核心に迫りたいじゃない?「ちゃんとフラメンコだ」って思ってもらいたいし、やれることはやるよね。
真彩:私も彫刻家のマリアを演じるにあたって、「石掘れるなら石掘りに行くよ!」って言って、実際に行きました(笑)。
吉野:さすがだなって思いましたよ。稽古場の外で石掘っているんですよ、カンカンカンカンって(笑)。この人すごいなって思いました。
真彩:何かリアルにできることがあるなら、やるべきだって思うんですよね。
吉野:そう、近づけるからね。
真彩:やるとやらないとじゃ全然違いますもんね。だから出番前も石を触ったりしていました。圭吾さんと踊る場面は、マリア自身は相手のことを石だと思っているわけだから、「相手には体温がない」と思いながら触れてみたりとか…。
吉野:うん、それってすごく大事なことだよ。
真彩:だから圭吾さんに「自分と似ている」と言っていただけてうれしいです!
初対面のときの印象は…?
吉野:「ドン・ジュアン」の歌稽古のときに初めて会ったじゃない。すごく明るくて元気のある人がいるなって思ったよ(笑)。結構気さくに話しかけてくれて…。
真彩:お稽古と公演期間という短い時間でしかご一緒できないので、心をオープンにせずに相手と繋がることも出来ないまま終わるのは嫌だなと。それに! ずっと憧れている方だったのでやっぱり繋がり持ちたいじゃないですか(笑)!
吉野:初めてお会いしてから、その後調べたら母校が同じだってことがわかったんです。僕は演劇科で、彼女は英語科だったけどね。
真彩:そうなんです! 私、演劇科だったと思われがちなのですが、実は英語科だったんですよ。
吉野:「演劇科なんて…」って思ってたんでしょ?(笑)
真彩:違いますよ(笑)! 演劇科には、演劇科というブランドがあって。
だから演劇科の子と廊下ですれ違う時とかもドキドキでしたけど、心の中で「演劇科じゃないけど宝塚絶対受かるぞ!」って思っていました(笑)。
吉野:稽古を通して一緒に過ごす中で、ただ明るいだけじゃなくて、すごく考えが深い人だなって思いましたね。それだけ役を愛して追求してやってくれる人に会えたことがものすごくうれしいです。
真彩:私も本当にうれしいです! だって、本当に小さい頃から客席から観ていた方ですもん!
退団してどんな出会いがあるか不安もあったんですけど、自分が憧れていた方たちと共演できて「人生ってやっぱりすごいことの連続で、なんてハッピーなんだ!」って思いました。
舞台が好きだって思いだけでここまでやってきましたけど、子供の頃に感じた「舞台に立ちたい」という気持ちを助長させてくれた人にお会いできて、共演できて…本当に幸せです。
稽古の時「もっと身をゆだねていいよ」って言ってくださったのも、本当にうれしかったです。