視聴者も感動「兼子役が大島優子さんで良かった」
そして兼子は決意した。栄一の前に三つ指をつき、「離縁してくださいませ」と頭を下げた。
「妻であれば女の矜持が守られると思っていた私が愚かでございました。あなた様の心もいまだ前の奥様にございます。私は、望まれて妻になりたいなどとバカげたことを言うつもりは毛頭ございません。しかしそれでも、いくばくかの情がなければ妻にはなれません」「きっと私は、一生かけても奥様の代わりにはなれません」
兼子の目に涙があふれる。兼子にとって、前妻・千代の存在は大きすぎた。みずからも望んで渋沢家に入り、立場も守られているにもかかわらず、一家全体から感じる“求められていない”という空気。求められない寂しさか、あるいはその空気に負けた自分のふがいなさに対する涙だろうか。
そんな兼子のやるせない心情を、大島が切ない表情で見せ、視聴者の心をつかんだ。「兼子さんの涙にもらい泣き…!」「兼子役が大島優子さんで良かった」「大島優子、本当にいい女優さんになった」「所作が美しく、表情も豊か。ものすごく繊細なお芝居に引き込まれた」と絶賛の声が上がる注目を集めた。
子役から芸能活動をスタートさせ、AKB48メンバーとしての活動を経て現在は女優として活躍する大島。連続テレビ小説「スカーレット」の熊谷照子役の好演も記憶に新しい大島が、初の大河ドラマ出演で新たな当たり役を手にした。
兼子の訴えにより、栄一は喪失感から引き戻された。「これからはもっと俺を叱ってくれ」。目の前の兼子をしっかり見つめ、そう話した栄一。兼子は、千代が面倒を見ていた養育院も引き継ぎ、栄一の新たなパートナーとして内助の功を発揮していく。