「一生さんにはすごく勉強させてもらいました」
――笠松さんならではの視点ですね。では、もう一つの作品についてお聞かせください。「岸辺露伴は動かない」の第4話に出演されますが、2020年末に放送された第一弾はご覧になりましたか?
見ましたよ〜。出ている方たちがすごいし、クオリティーは高いし、「そこ、そこ!」というファン心理を大事にした作品だなと感じました。その秘密はスタッフさんたちにお会いしてわかりました。人物デザイン監修(柘植伊佐夫)をはじめ、衣装さんもヘアメイクさんもむちゃくちゃこだわっているんです。監督(演出)の渡辺一貴さんは特にそうで、最初にお会いした時にすごく楽しそうに説明をされていて。だから、この時も素直に喜ぶだけじゃいられませんでした(笑)。だって、こちらの作品も途中から入ることになるわけですから。
――確かにどちらもそうですね。演じる橋本陽馬役についてはいかがですか?
陽馬の体を作り上げるのは簡単ではないし、できるかなと不安でした。でも、筋肉に取り憑かれた役だから、あの体にならなかったら意味がない。キャラクターを汚したくもないし、自分の名前に傷もつけたくないから、不安だしためらいもありました。でも、気付くとどんどん新しい台本が届くんです(笑)。読むのが怖いと思いながらも、チラチラ台本を読むとだんだん脳みそがやるならこうしないと、とかって考え出すんですよ。そんなふうにどんどん新しい台本が届いて、気付いたら現場にいて、気付いたらこうして取材を受けている(笑)。皆さんにどう見られるのか、怖いです。ガッカリされるのが一番イヤなので。
――撮影期間中に、筋肉に変化が出るようにトレーニングをしたわけですよね?
最初の撮影期間から後半のシーンの撮影まで3週間ぐらい空けてくださったので、正直、そこまでの差は出ないんじゃないかと思いながらも必死に取り組みました。3週間だと人間の細胞まで変わることは難しくて。最低、3カ月は必要ですから。
――そうして、Instagramにアップされている食事制限の歌が生まれたわけですね。
そうです(笑)。何か面白くした方が絶対いいと思ったんです。だって、グチってもサムいし、頑張ってます! とアピールするのも違う。でも、このモヤモヤした何かを消化しておかないとおかしなテンションになると思ったので、ああいうことになりました(笑)。恥ずかしいな〜。
――撮影が終わった時の気持ちは?
もう二度と筋トレしない!って、マネージャーに言いました(笑)。でも、高橋一生さんは粋ですね。終わったら何が食べたいですか?と聞かれていたんですけど、撮影が終わった日に僕が食べたいと言っていたものを全部プレゼントしてくれたんです。「今日だけは好きなもの食べてください」って。
撮影中もいろんな話を聞いてくれて、いろんなアドバイスをくださって。「笠松さんは大丈夫ですよ。笠松さんはもうできていますよ」と、僕の背中を押す言葉をたくさんいただいたんです。僕、初めてじゃないかな? 現場で、一緒に写真撮ってもらってもいいですか?って言ったの。本当に大好きです。高橋二生になりたいくらい(笑)。
――(大笑)。名言出ましたね!
もう本当にやさしくて。それに僕なんかがいうのもおこがましいですけど、やはりお芝居が超魅力的でした。それで何でだろうとずっと考えていたんですけど、いろんなことを考えて、いろんな気遣いをされているんだろうと思いました。芝居って気遣いじゃないですか? 相手役に対しても、自分の役に対しても気遣いが必要だと思うので一生さんにはすごく勉強させてもらいました。
――一番印象に残っているシーンは?
ボルダリングのシーンです。実は練習で一回も成功できなかったんです。だって、部屋の天井を伝うんですよ? 漫画にも同じシーンがあるんですけど、聞いたことあります? 漫画を超える実写って。ボルダリングの先生に「こんなの初心者ができるんですか?」って聞いたら、「無理だと思います。でも、監督が笠松さんならいけると言っていたので」って(笑)。最初は冗談も言ってたんですけど、だんだん怖くなってきて…。そうしたら、本番で2回成功できたんです! 監督にも「ありがとう」と言ってもらえて、その日の帰り道はすごい気分が良くて、思わずマネージャーに電話しました(笑)。
――すごいです。そのシーンも注目します。結局、その後、筋トレは?
あ、その後、復活しました。陽馬が(自分の)どっかにいるなと思います。ジムに行ったら、「橋本陽馬、本当に来てるんですね」と言われました(笑)。放送されたら、もっといじられるんだろうなと思っています。
――「青天を衝け」も「岸辺露伴は動かない」もどちらも楽しみです。
「青天―」の現場はすごくいい緊張感がありながらもあたたかくて、「露伴」はいい意味でいろんな思いがあふれる現場でした。どちらも、純粋に楽しんでいただけたらうれしいです。
取材・文=及川静