――古沢さんの書かれる脚本は、どういうところに魅力があると思いますか?
小手:すごく雑な言い方をしてしまうと、しっかりしています。脚本もタイプによっては現場での改変や微調整が多々あるのですが、古沢さんの場合はそれがほとんどない。脚本上ですでにキャラクターは仕上がっていますし、物語の構成も起承転結を含めて緻密に練り上げられているので、古沢さんが書かれたものをそのままやるのが一番面白いんですよね。だから、五十嵐を演じるときはあまり悩みません。
――五十嵐はアドリブが多いのかと思っていました。
小手:そういう印象を持たれていることは、すごくよく分かります。でも、意外とちゃんとマジメにやっているんですよ(笑)。ただ、ト書きのシーンとかリアクションとか全てのセリフが一言一句書かれているわけではないので、そこを役者たちが自由に広げていくことはありますね。でも、古沢さんが言葉を選んで書いてらっしゃる部分はそのままやった方がバシッとハマりますし、逆にアドリブのときも古沢さんが書かれそうな言葉を想像しながらやっているところはあります。
――「そのままやった方が面白い」のは古沢さんの脚本や言葉選びの力なのですね。
小手:古沢さんの言葉選びのセンスは本当にすごい。古沢さんでなければ書けない脚本ですし、「コンフィデンスマンJP」の人気を支えているのは古沢さんの脚本の力だと思います。そのうえで、僕の中では古沢さんと三谷幸喜さんは似ている感じがしていて。お2人の書かれる脚本はまさに「そのままやった方が面白い」ものばかりですし、僕が本音の部分をいろいろ聞き出そうとしても結局はぐらかされてしまうところも似ています(笑)。もしかしたらそれは僕自身の問題なのかもしれないけれど(笑)、それでも信頼はしてくださっているみたいなので、ありがたいですね。
――五十嵐ほどのハマり役だと、周囲からの反響も大きいのでは?
小手:五十嵐というキャラクターが皆さんから愛されているのはうれしいですし、励みにもなるのですが、それがときどき大きな壁として自分の前に立ちはだかるんですよね。五十嵐とは長い付き合いですし、僕としても思い入れがあって愛していますが、その上で “五十嵐を超えるキャラクターを作るにはどうすればいいのか”が僕の今の課題でもあります。
――「コンフィデンスマンJP」以降、「SUITS/スーツ」(2018年・2020年、フジテレビ系)や「TOKYO MER~走る緊急救命室~」(2021年、TBS系)などでも印象的な役を演じられていましたが、それでも五十嵐のイメージが強い?
小手:強いと思いますね。「SUITS/スーツ」の蟹江もわりとクセのある男でしたが、コロナ禍の緊急コラボ企画(2020年4月)で五十嵐と一人二役で直接対決をしたときも、やっぱり自然と五十嵐が勝ってましたから。
「TOKYO MER」の冬木先生は穏やかで見守り系のキャラクターだったので、余計に困惑したでしょうね。世間から「このままいい人で終わるはずがない」とか言われて(笑)。それでいて五十嵐は五十嵐で、蟹江や冬木先生で僕の人気が出ることを一切快く思ってないようで、僕の頭の中で「小手伸也といえば五十嵐だろ。でしゃばるな」と他のキャラを威圧する声が聞こえてくるんですよね(笑)。僕に対する独占欲がスゴイんです、五十嵐って(笑)。
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