「対象者に寄り添う距離感の表現をすごく考えた」
社会復帰を目指す前科者に寄り添う保護司・阿川と、犯罪への怒りを胸に燃やす刑事・滝本を演じた2人。演じる上で意識したことを尋ねると「阿川自身が持つ“存在価値が分からないまま生きている感じ”を大事にしながら熱血教師になるのではなく、対象者に寄り添うことができる距離感を上手く表現したいという部分をすごく考えました。そのために、どこまで諭すように言うのか、セリフひと言ひと言に込める力量みたいなものは意識しました」と有村。
一方、磯村は「分かりやすく言うと、(滝本)真司はずっとマグマがぐつぐつしている感じ。阿川との過去の出来事が今の刑事という職業につながっていて、加害者を許さない、二度と同じことが繰り返されないように自分が止めなければならないという使命感に追われているんです。その苛立ちが目や手に出るように意識して演じていました」と語る。
「最初の撮影シーンで、僕らはヒデとみね子じゃなく阿川と真司だとすぐ思えた」
NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(2017年)以来の再共演となった2人だが、「ひよっこ」とは全く違うジャンルの本作。撮影現場での様子をうかがうと、有村は「『ひよっこ』は温かい作品で、なんて平和な現場なんだろうといつも思っていました。だからこそ、ちょっと照れくささもありながら“今回、ちゃんとできるかな”という気持ちも正直あって。でも、現場に入ってすぐに、磯村くんの佇まいや顔つきから(ひよっこの)ヒデさんじゃないなと感じて、その後は、あうんの呼吸で進められたと思います」と話す。
磯村も「本当に同じ思いです。今回、ご一緒させていただくことはすごく楽しみだったんですけど、僕もどこか緊張していました。でも最初に撮影したコンビニでのシーンで、僕らはヒデとみね子じゃなくて、『前科者』という作品の中に生きている阿川と真司だとすぐに思ったんですよね。架純ちゃんの目や空気感が“阿川”だった。なので、そこからは安心して現場に挑みました」とのこと。
仲良しという関係性の役どころでもなかったため、多少の距離感は必要と感じていたようだが、「でも、『ひよっこ』の時と変わらない架純ちゃんの姿が現場にはあったので、僕はうれしかったんです。あの頃のまま穏やかで優しくて、“おはよう”って言えばニコッとあいさつを返してくれる。彼女のひまわりみたいな姿が変わらずにあるなと思いました」(磯村)と、現場での様子も教えてくれた。