3月1日から俳優業に専念する“川上なな実”。恵比寿マスカッツのメンバーとしても活動する彼女は、個人の活動としても1月12日に自伝的小説「決めたのは全部、私だった」、ここ2年間の川上のオンもオフもさらけ出した写真集「すべて光」を同時発売したほか、1月16日まで都内の2会場で写真展「すべて光」も開催するなどさまざまな展開を見せている。その中でも同小説は、フィクションも織り交ぜられているが基本的な内容はほぼノンフィクション。2月28日をもって引退するセクシー女優・ストリッパー“川上奈々美”がアダルト業界に足を踏み入れたところから、それ以降の心境の変化、「全裸監督」の内田英治監督とのやり取り、一人の女性の生きざまや葛藤が赤裸々に書かれている。「AV女優とストリッパーの過去も武器にする、それが自分のプロフィール」と笑顔で語る彼女が伝えたい思いとは――。
――ご自身で出来上がった小説を読んでみていかがでしたか?
中身も表紙も「特に女性に手に取ってもらいたい」という思いを込めた小説です。実際みんなどう感じるんだろう。私自身は最終的に2回通して読んで、1回目は「よく書いた!」って感動して、2回目は「なんだ、このきれいごとは!」って恥ずかしくなりました。その両極端の反応があるのかな。
私のいる業界の女性だけじゃなく、目の前のことに悩んだり、覚悟して臨んだり、みんな一緒だと思う。流されたり、はき違えたりもします。欠落部分は誰しもあるけど、理解して、客観視すれば、それを補おうとして素敵なパートナーや友達が増えていくと思う。心配して救いたいって思ってくれる人、見ていてくれる人は絶対います。小説で初めて伝えましたが、私自身も愛し愛される人ができました。今まで自分のことばっかり考えて付き合っていた恋愛は、本当の恋愛じゃなかったんだという気付きもあって。
自己肯定感が低い、苦しい状況にいる、特にそういう女性に読んでもらって、ヒントを見つけてもらえたらうれしいです。「決めたのは全部、私だった」というタイトル、めんどくさいけど人生はすべて自分で選択する必要性があって、それに覚悟と責任を持つということ。例えば、「今日の夜ご飯、肉と魚どっちにしようかな」「健康のために魚にしよう」とか、そういうことからでも良いと思います(笑)。自分が選んで、その先をプラスにしていくことが大切なんだと思います。
――引退を機に「第2のステージ応援プロジェクト」でさまざまな動きがありますが、第2のステージ、というと?
3月1日以降は、俳優業に専念することになります。でもそれは「過去はなかったことにして、脱ぎの仕事はしなくなる」ではないです。AV女優とストリッパーの過去も武器にする、それが自分のプロフィールだから。
裸でのお仕事や、この世界にだまされて入ったことにネガティブな捉え方しかされてない方が多いと思います。もちろん悲しい気持ちもゼロではないですが、今のAV業界はそれだけじゃなく、居場所の一つでもあり、救われることも多いんだっていうことを伝えたいと思って書きました。「だまされた」という表面だけじゃなく、中を見て判断してほしいです。
今は、この仕事にやりがいを感じる女優さんも結構多いんです。たとえば、ジューン・ラブジョイちゃんは海外と日本の文化の違いに気付いて日本の性産業に入りたいってデビューしたし、今後監督として活動するあおいれなちゃんは「AVっておバカなフェチ作品があったりして面白いなぁ最高だな」って思ったって言っていたり、美谷朱里ちゃんはAVが大好きでレビューとかも書いていて女優なのに作り手の視点で楽しんでいたり。バカだなって思う作品もみんなで真面目に作って見てもらえる、そんなクリエイティブな仕事って最高ですよね。
それと私たちだけじゃなく誰にとっても、性の追求は大切。実際に経験しなくても、知ることは必要だと思う。たとえば小説の中に出てくる「今野さん」っていう人物、私の中では人間とは思えないくら冷淡な人でしたが、関わってみてベッドを共にしたら私を子供みたいに求めていて、「この人も人の子なんだな」って気付きもあって。みんな葛藤しながら生きているなあって思います。
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