人気ハンティングアクションゲーム「モンスターハンター」(モンハン)をはじめとしたゲームキャラクターや、「スパイダーマン」のスーパーアクションを完全再現した動画がSNSで話題となっている。人間離れした動きを身体ひとつで実演しているのは、武道+アクロバットの次世代スポーツ「エクストリーム・マーシャルアーツ」全日本チャンピオンの顔も持つ、俳優の野間理孔さん。ゲームキャラそのもののアクションを再現するコツ、そして「エクストリーム・マーシャルアーツ」について話を聞いた。
大体の動きはコピーできる
——モンハンのアクション再現動画を作ろうと思ったきっかけは何ですか?
もともとゲームが好きで、モンハンをプレイしていたときに、太刀の動きは再現できそうだなと思ったのがきっかけです。中二病っぽいことが大好きなので、自分がゲームのキャラクターになりきれたら楽しいなと。それで第一弾として太刀の動画を作ってみたら反響があって、他の武器にもチャレンジしました。
——現在だとYouTubeでは双剣の再現動画がトップの74万回再生ですが、どの動画も非常に再現度が高いですよね。野間さんはTwitterのプロフィール欄に「大体の動きはコピーできます。」と書いていますが、いったいどんな手順でコピーしているんですか?
まず自分でゲームをプレイして、それを画面録画したものをコマ送りで繰り返し見ながら、動きを理解して自分の身体に落とし込みます。できたと思っても、動画を撮って見返してみると大体修正点が見つかるので、納得いくまで直します。大体1本の動画を撮るのに2,3日はかかりますね。
——コピーするのが難しかった動きはありますか?
いちばん大変だったのはモンハンだと操虫棍です。棒術をベースにした動きだと思うんですが、癖が強くて…何回動画を見ても逆手と順手の持ち替えがわからなくて苦労しました。あと大剣は、軽めに作ったとはいえ大きいので、横にして振るときに風の抵抗が強くて大変でした。うちわみたいになってしまって(笑)
——逆にスムーズにいったものは?
ジンオウガはいちばん好きなモンスターで動きも把握していたし、動きの全部が自分の引き出しにあるアクションだったのでスムーズでした。最近だとスパイダーマンもそうです。アクロバットの方が、自分の積み上げてきたスキルを活かせるので、練習時間は少なくてすむんですよね。武器を使うと、足運びや持ち方など確認することが多いから難しいです。
元々動きをコピーするのに慣れていた
——アクロバットの方がスムーズというのもすごいですが…そもそも野間さんがやられている「エクストリーム・マーシャルアーツ」(以下XMA)とは、どんなスポーツなんですか?
すごく簡単に言うと「フリースタイル武術演舞」です。空手の型にアクロバットを3割混ぜたようなイメージで、評価は型の奇麗さと技の難度で決まります。90年代にアメリカで始まったスポーツで、XMAの中でもアクロバットの連続技だけを見せる競技は「トリッキング」といいます。
——まだ日本ではあまりメジャーではない競技かと思うのですが、どのようにしてXMAに出会ったんですか?
中学生の頃、格闘ゲームの影響でカポエイラやテコンドーの真似をしていたのと、「SASUKE」を好きな友達に、パルクールを使う選手の動画を見せられたんです。それがかっこよくてアクロバットに憧れたのがきっかけですね。公園の芝生や公民館なんかで、ひたすら友達とYouTubeで見つけたトリッキングの動画を見ては真似する形で練習して、バク転もできるようになりました。
——バク転って、自己流で練習してできるようになるものなんですね…。
当時まだ教えてくれるところが近くになかったんですよ。その後スクールに入り、XMAの基礎や型を教わりましたが、練習方法は基本的には同じです。やりたい動きをひたすら見てコピーする。今のゲーム再現動画も、コピーするのが人間からキャラクターになったけど、やっていることは一緒なんです。
——なるほど、元々動きをコピーするのに慣れていたんですね。
ロマンを追い求めていきたい
——XMAの全日本チャンピオンにもなられているんですよね。
16歳頃に今所属しているXMAのチーム「演武道」に入り、2013年、17歳で全日本チャンピオンになりました。XMAはアメリカの方が盛んなので、毎年1ヶ月間は強化合宿に行っていて、トリッキングの最大級の大会である「Camp adrenaline」にも、初の日本人ゲストとして呼ばれたことがあります。その後19歳頃から舞台の面白さに目覚めて、俳優として活動し始めました。
——俳優としてのアクロバットと、競技としてのアクロバットに違いはありますか?
パフォーマンスとしては、技の難易度だけを追求するより、基本をどれだけうまく見せられるかが大事だと思います。たとえばアクロバットで回転しながら3回ひねるのと1回ひねるのだったら、トリッキングの競技においては3回ひねりの方が難度が高いので高評価ですが、正直専門家じゃない観客の方からしたら、そこの違いってよくわからない。それならかっこよく着地してスムーズに次の動きに入るとか、アクロバットにストーリー性を作って魅せることも、パフォーマンスとしては大事なんじゃないかと思うんですよね。もちろん難易度も重要ですし、そこにも自信はありますが。
——これから挑戦していきたいことはありますか?
俳優としては、とにかく舞台に立ち続けたい。舞台で自分の持てるものを全部出して表現したいと思っています。歌、ダンス、お芝居、殺陣、アクロバットという自分の特技を全部アピールしたい。アクション再現動画については、やってみたいネタは無限にあるので、引き続きロマンを追い求めていきたいです。現時点で再現してみたいアクションが50個くらいあるんですよ(笑)
——最後に、再現動画で大事にしている「ロマン」とは何ですか?
非現実的で、誰もが一度は憧れるようなことかなと思います。誰しも心の奥底に中二病の要素を持っていると思うので。