ディズニー映画に欠かせない作曲家が語る「美女と野獣」
「リトル・マーメイド」「アラジン」「塔の上のラプンツェル」など、誰もが耳にしたことのあるディズニー・アニメーション映画の主題歌や劇中歌を手掛け、アカデミー賞を8回受賞している天才作曲家アラン・メンケン氏。絶賛公開中の実写版「美女と野獣」では、アニメーション版の名曲に加えて3曲を新たに作曲。類まれなメロディーセンスで人々の心を魅了するメンケン氏に、作品に対する思いや作曲について聞いた。
――映画「美女と野獣」の実写化の話を聞いたときの感想は?
最初に聞いた時はとてもうれしかったですし、自分がそこに参加できると分かったときにはもっとうれしかったです。自分の手掛けたものが、別の何か(今回だとアニメーションから実写)になるというのは、細かいことを知らないうちは多少ナーバスになるものです。
しかし、ビル(・ゴンドン)が監督になると聞いて、自分が何をするべきなのかが見えたので、とてもやりやすくなりました。
――毎回キャラクターを意識して作曲されるということですが、今回はどういう部分を意識されましたか?
(キャラクターの)各シーンでの感情や、キャラクターの特徴、そしてストーリーを前に進めていく…ということを考えながら作っています。常に、物語とそれがどんなふうにつづられるか。今回の実写版では“18世紀フランス”と、時と場所がはっきりしていて、ベル(エマ・ワトソン)と(父の)モーリス(ケビン・クライン)のバックストーリーが描かれるというところですね。
3曲を追加したけれども、厳密にいうと繰り返し同じメロディーであったり、別のシーンでまた出てきたりするんです。まず、モーリスがオルゴールをいじっている時にかかる曲「時は永遠に」、これはベルの幼い頃のことを歌っていて、少しフランス的な要素を感じられるようなイメージです。
そして、お城の住人たちが幸せな日々を思って歌う「デイズ・イン・ザ・サン~日差しをあびて~」は、子守歌のような質感を持たせています。野獣が歌い上げるバラードの「ひそかな夢」、これは“愛”を理解したということを歌っている曲なんですね。
ベルは物理的には去ってしまったけれど、愛するが故に野獣が解き放ったわけで…“愛”がどういうものか分かったことに感謝している部分ですね。
――曲を作るのは作詞を担当されたティム・ライス氏と共同作業だと思いますが、どのように作っていますか?
ティム・ライスとは映画「アラジン」でも一緒に仕事をしています。その時初めて組んだのですが、その後「美女と野獣」の舞台版でも一緒にやっていて。今回はロンドンに行ってスタジオを作りました。そこで、ティムとアイデアを交換しながら話し合って作業に入りました。
例えば…オルゴールだとこんな感じ?(と実際にピアノを弾くアラン・メンケン氏)というふうに、「フランス的なハーモニーっていいよなぁ」なんていう話をしながらですね。そして、こういう曲にしたいと思ったら、“自分”を通して曲が生まれ出てくるのを待ちます。
――ディズニー映画において音楽はとても重要な位置づけですよね。それを担当することについてはどう思いますか?
(感慨深げに)40年もやっているのかぁ…。本当に大きな仕事ではあるけれど、そのチャレンジを非常に楽しんでいます。野球に例えると、ファストボールを捉える打者のように球が投げられれば、きっちり決める。そのために、作業に入る前はその曲について知っておくようにしています。
――ディズニー・ヴィランズの曲も個性豊かですが、どのように作っていますか?
ガストンやル・フウですね。どちらかというとヴィランズは英語だと悪役ということになってしまうんですよね。それよりは、“敵対役”だと僕は考えています。確かに、適対役を描いているときは(主人公とは)違うイメージになることが多いです。
ミュージカルの場合ですと、主人公には欲望があり、葛藤があり、その欲望を止める力というのが敵対役になるわけですが、そこから表現することが多いかな。作品のトーンにもよりますが。
――今まで手掛けてきたたくさんのディズニー作品の音楽の中から、お気に入りはありますか?
その質問、僕が絶対に嫌がると思って聞いたでしょう?(笑) 昨日、劇団四季の「ノートルダムの鐘」を監督と一緒に見に行ったんです。ある意味「ノートルダムの鐘」が一番野心的な作品だったかもしれない。でも、僕にとってはそれぞれ違うから、決められないかな。
――その素晴らしい音楽を生み出すモチベーションは何ですか?
単純に好きなんですよね、作曲するのが。もちろん、得意だという自覚はあるけれども。作品を作り上げているという経験が、僕に高い充足感を与えてくれているんです。音楽の力って本当にすごい、という思いがついえないのかもしれません。
――最後に、映画「美女と野獣」の見どころを教えてください。
非常に豊かな経験が劇場でみなさまを待っています。とてもエモーショナルで深みがあり、歓喜させる作品です。そして、美しくロマンティックでもある。皆さんの感じるままに見ていただきたい、そんな作品です。
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