色によるキャラ造形の固定観念から解放され、新たなドラマを
次に考えたのは5人が揃うときのインパクト。ドンブラザーズの面々は変身前、お互いの顔や居場所、素性を知らずに過ごしており、敵が現れると自身をアバターに変えられ、瞬間移動で戦場に放り出される。戦場では共に戦うが、闘いが終わればまた元の場所に戻り、しばらくは変身前の姿で5人が揃わない。ゆえに、いつか生身で一同に介した際、それがカタルシスとなる。この設定は、ネットゲームやSNSでは知り合いだが、リアルでは遠く離れた場所にいてお互いの素性もよく知らないというデジタル社会の現代と酷似している。
このアバターの概念で、ドンブラザーズも過去の戦隊に変身ができる。「象徴的なのは、ピンクが今回は男性戦士なんですね。その彼が例えば過去のゴーカイピンクにチェンジすると、ゴーカイピンクは女性戦士なので、心は男性だけど、姿かたちは女性戦士という変身になるんです」
いかにもジェンダーレス時代らしい設定だが、白倉Pは「多様性とか御大層なことを考えているわけではない」と言う。「戦隊はステレオタイプのイメージが強すぎる。レッドは熱血、ブルーはクールなど、色が決まった途端に人物造形が固定されてしまう。それを超えないと同じドラマの繰り返しになる気がするんです。一番わかりやすいのはピンク=女性戦士。これを男性に変え、“この番組はステレオタイプな人物造形をしていませんよ”とメッセージを発しています」
「女性戦士をピンクにすると、いかにもな紅一点、記号的な『女性』になってしまう。そうしないで、ひとりの人間として描きたい。同時に、昔のイエローは男性戦士でしたが、女性戦士にも開放されて女性も色の選択ができるようになった。それに対して男性はピンクが選べないという固定観念は多少なりともある。男性がピンクを選んでもいいじゃないか。男性にも色の開放をという思いもあります」
実際、ピンクはすでに男性に開放されている。たとえばジャニーズのグループでも、メンバーカラーがピンクであるタレントは亀梨和也、藤ヶ谷太輔など数多く存在する。「10年以上前、『仮面ライダーディケイド』(2009年)でもカラーにピンクを入れるかどうかで議論になりました。しかしその会議中、ふと横を見ると、次のプロデューサーがしっかりピンクのシャツを(笑)。男性もすでに普通にピンクを着ているわと。世の中は10年も前からそうなっていたのに、スーパー戦隊だけ遅れていたのかもしれません」
暴太郎戦隊ドンブラザーズ
毎週日曜朝9:30~ テレビ朝日系にて放送中第1話はYouTube/TELASA/東映特撮ファンクラブにて無料配信中
番組公式サイト
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