──以前、三上さんは「演技にこだわり過ぎて、“悪魔”と言われることがある」とコメントしていましたが、今回も“悪魔”ぶりは発揮されていますか?
キツい質問ですね…(笑)。僕は放っておくと、悪魔になるんですよね。皆さんに愛される役者になろうと、思ってはいるんですが…。僕は仕事に熱がない人が嫌なんですけど、「僕はここまで考えているんですよ」っていうのを見せちゃうと悪魔になっちゃうし、難しいですよね…。悩んでいます(笑)。
一時期、「いい人になる」のがマイブームだったことがあるんですけど、変な好々爺(や)みたいになっちゃって(笑)。自分らしくないなと思ったんですよね。まあ、僕は人の傷に塩を塗ることが得意なので(笑)、それはやめようかなと思いますけど。
──今回の役は、“トランプ大統領をほうふつとさせる”暴君ということですが、演じてみていかがですか?
イメージの1つではありますがトランプ大統領を演じるわけではないので、彼のことはあまり意識していないです。
そもそもトランプ大統領がどういう人なのか、僕も含めて、皆さんもきっと分かっていないと思います。暴言を吐いたり過激な行動をするという“出口”は見えていますが、実際の彼は得体の知れない存在です。
もし本当のトランプ大統領が大変な人格者で、信念に裏打ちされたスマートな人だったとしたら、これほど強力で恐ろしいものはないですから。そういうところを考えていくと、“暴君であるトランプ大統領”をモチーフにするというのは、ちょっと違うかなと思いますね。
視聴者の方が青井を見て、「この人、分かんないな」と思うのもまた、僕たちの狙いです。ドラマの序盤は、そういうさじ加減が難しいですね。
──青井を演じる上での面白さは何ですか?
普段言えないようなことを、せりふを借りて言っています。あいまいなことはいつでも言えますが、僕は非難することや言いたいことは実名で言うことが大好きなのでね(笑)。すっきりしています! …冗談ですけど(笑)。
──三上さんご自身は、メディアについてどう感じていますか?
メディアは僕にとって身近なものなので、考えちゃいますよね。自分一人がつぶれるだけではなくて、根拠のない情報で家族が追い込まれるようなこともあるわけですから。
だけどどうしてそうなったのかを考えていくと、本当に根が深くて。行き着くところは人々の暗部だと思います。情報の受け手側も含めて、気付いた人からモラルを見詰め直すことしかないんじゃないでしょうか。
「(その情報を)求めている人がいるから」とか「食べていくために」とか、言い訳をすればいくらでもできる中で、歯を食いしばって手を引くことが大事なのではないでしょうか。
──ご自身はSNSなどで発信者の側になろうとは思わないのですか?
SNSは全くやらないですね。一線を引いています。自己宣伝のツールとしてやろうかなと思ったこともあるのですが、役者にとって、大切なのは「自分」ではなく「役」だと思ったんです。自分を出せば出すほど、役の説得力がなくなっちゃう。
ただ、「役者・三上博史がここにいるよ」という道しるべのために、Instagramくらいはやろうかと思ったこともあるんです(笑)。でもそうすると、どんどんなし崩し的になっちゃうかなと思って。やめておくことにしましたね。
──では最後に、あらためて本作の見どころを教えてください。
マスコミ業界や政界のことだと思って見ていると、気付けばSNSなど身近な情報の問題も考えさせられて、面白いんじゃないでしょうか。
WOWOWは第1話無料放送です! せめて、本気で作ったこんなドラマを放送しているよっていうことだけでも、知っておいていただきたいですね(笑)。
4月30日(日)スタート
毎週日曜夜10:00-11:00
WOWOWプライムで放送 ※第1話は無料
【HP】http://www.wowow.co.jp/dramaw/shacho/
原作=堂場瞬一「社長室の冬」(集英社)
演出=村上牧人、山内宗信
脚本=田中眞一、三浦駿斗
出演=三上博史、福士誠治、北乃きい、シャーロット・ケイト・フォックス、小市慢太郎、渡辺いっけい、中村敦夫/南沢奈央、原日出子・笹野高史、田中泯、岸部一徳
■第1話予告映像