“解散の危機もあった”相方・吉村崇は「本当に真逆の性格」
――本著では相方の吉村さんのことも書かれていますよね。本書には、解散の危機もあったとも書かれています。
全部吉村から解散を切り出してきたんですけどね(笑)。僕は最初から「解散と言われたら解散する」と決めていたので。
――それでも結成から22年もコンビを続けられた理由は何でしょうか。
吉村は「解散だ!」と言っても、その日のうちに「ごめん、もう一回やろう」と電話をかけてくるんですよ(笑)。それが3~4回あって、僕はその都度「うん、わかった」としか言ってないんじゃないかな。僕も僕で、自分から解散を切り出す勇気もないし、自分で人生を決めたことすらほとんどなくて。だから、あいつに「組もう」と言われたからコンビを組んだし、あいつがボケをやりたい、ネタを作りたいと言ってきたから「うん、わかった」となったし。
つまり、僕が「解散しよう」と言えないタイプだったということが、長く続いた理由として大きかったんだと思います。2人とも吉村みたいなタイプだったら絶対続いてないし、かといって、2人とも僕みたいなタイプだったらコンビさえ組んでいない気がします。
――そもそも、吉村さんはなぜ解散を切り出してしまうんですかね。
あいつは感情的に言っちゃうんです。解散を自分から切り出しておいて「止めてよ」っていう(笑)。僕からしたら「解散するつもりがないなら言うなよ」という思いもあって、本当に真逆の性格なんです(笑)。
――今の吉村さんとの間柄はいかがですか。
一番良い状態だと思います。昔は「嫌いだ」「もっとこうして欲しい」と不満もあったけど、22年目にもなるとそんな考えもなくなり、そういう部分も含めて吉村という人間なんだと考えるようになりました。だから今は、普通に一緒に仕事をするのが楽しいし、関係は良好ですね。
――「一緒に仕事をするのが楽しい」と思えるまでになった理由は何なのでしょうか。
「求めなくなったから」じゃないですかね。吉村の弱点だと僕が感じるところも、一つの魅力だと22年でようやく思えるようになりました。きっと、かつては「恋人」でいようとしていたんでしょうね。それが「恋人じゃないんだ」と気づけたことが良かったように感じます。
ノブコブ徳井が考える“売れる芸人”に必要なこと…大前提は「ちゃんと未来を考えていない人」
――本の中では売れるまでのヒストリーが多く書かれている印象ですが、徳井さんが思う「売れる芸人」に必要な要素は何ですか。
まず「ちゃんと未来を考えていない人」というのが大前提ですね。芸人は未来を考えると絶対にやれない仕事だと思うんです。仮に仕事が増えたとしても、なんらかの事故を起こせば、明日から仕事がゼロになることだってあり得る。「ま、いっか」「なんとかなるでしょ」と、楽観的にいられることが売れる芸人の第一条件ですね。
――なるほど。
それこそ、20代の若手の頃は、みんなと楽しくバカやって、金がなくても笑って過ごせるんです。でも、30歳ぐらいになって周りが家族を持ち始めると「俺、大丈夫かな…?」と不安に駆られるんですよ。で、絶対大丈夫じゃないんです。30歳~40歳ぐらいで売れている人って、ハライチやオードリーなどになるわけですが、10年近く売れ続けるってのはかなり運が良くないと厳しい。さらに、加藤(浩次)さんや有吉(弘行)さんといった40歳~50歳のゾーンが、30歳~40歳のゾーンよりもグッと狭まっているのは、誰の目から見ても明らかです。にもかかわらず「まだ芸人を続けよう」と思えるような、どうかしている脳みそを持ってなきゃいけないと思います(笑)。それが第一段階です。
――では、第二段階はなんでしょうか。
第二段階は、先細りになっていくことすら恐れず、自分が信じる面白いことをやり続けられるか。あるいは、自分が今まで持っていたこだわりをすべて捨てて、もう一度ゼロからテレビに向けた人間になれるか。僕はこのどちらかに振り切れるかが勝負だと思うんです。
前者といえば、くっきー!さんやもう中(もう中学生)。この2人のように「死んでもいいから面白いことだけをやる」っていう人は、いつか必ず先輩が「こいつすごいよ」って引き上げて、世間に紹介してくれる印象があります。後者といえばウチの相方。つまらないと言われることも恐れず、テレビで求められることを淡々とやっていき、「売れる」という目標だけを真っすぐ日々追いかけている。僕からしたらどちらも相当難しい道ですね。