紆余曲折があったから「今の“自分”がある」
――森田さんは昨年デビュー10年という節目でもあったと思いますが、これまでを振り返ってみていかがですか?
“10年”と括りで考えると、前半と後半で別物だったなっていうイメージが強いです。でも、がむしゃらにやっていた時期があるからこそ、今をありがたく楽しめていると思っていて。なので、いろんな波があったけど、全ての出来事や時間があったからこそ、今の“自分”があると思っています。
――ご自身にとってターニングポイントとなった作品を教えてください。
私自身もそうですし、皆さんが思い浮かべるのは「全裸監督」だと思います。もちろん存在は大きいですし、何度もターニングポイントだと言ってきてはいるのですが、“こういうお芝居がしたいな”と思えたのは、映画「世界でいちばん長い写真」(2018年)です。
撮影は実際にある高校で、エキストラも現役で高校に通っている生徒さんたちで、全てが“本物”だったんです。その時私は大学生だったのですが、本当に高校生だと思ってしまう感覚があって。実際にあるものの中に入る経験をしたことで、“お芝居は本物なんだな”と思えたんです。
せりふはなくてもそこで生きている感覚とか、お芝居っていうのは自由に生きることだということがすごく漠然と腑に落ちた瞬間で。その撮影自体がすごく濃くて、私はこの感覚でずっとお芝居をしていきたいと思えた作品でした。
最終回は「大きなパワーが生まれるんじゃないかなと思う」
――役柄を私生活で引きずってしまうことはありますか?
意外と役を掴んでしまえば、(私生活が)左右されることはないです。でも、掴むまでにいろいろなことを自分の中で試したりしていると、よく分かんなくなったりするんです。
でも、映画「さがす」(2022年)の撮影中は、普段からキャラクターが持つのイライラ感が拭えなくて。私自身、普段はイライラすることはないんですけど、無性に叫びたくなる感覚があったので、引きずることもあるかもしれないですね。
――役とプライベートのスイッチはどのタイミングで切り替わるのでしょうか?
メイクや衣装で(スイッチが)入ることが多いです。役衣装を脱いで自分の服を着ると“あ、戻ってきたな”という感覚がありますね。
――最後に「妻、小学生になる。」の最終回みどころと、読者へのメッセージをお願いします。
貴恵さんがもう亡くなっているという事実は1話も最終回も変わらないんです。貴恵さんのいる、いないっていう事実に対して、“いなくて悲しいな”で終わるのか、“どこかで見ていてくれるかもしれない”“恥じないように生きなきゃ”と思うのか。この差にすごく大きな違いを感じました。
自分の心の在り方次第で、その人が存在している時と変わらないくらいの大きな力をもらえると思うんです。
この世にいない大切な人に重ねてみてもらえたら、自分の人生の中で大きなパワーが生まれるんじゃないかなと思う最終回になっているので、ぜひ見ていただきたいです。