「何があっても必ず勝てる。私はそう信じてる」
また、解剖準備室で、「実行犯は逮捕できても、操った側の相手にどう立ち向かえばいいのか、正直判らなくて…」と珍しく弱音を吐くマリコに、早月(若村麻由美)が「20年以上も科捜研を続けてきたあなたなら、何があっても必ず勝てる。私はそう信じてる」と発破をかけるシーンがある。お互いを見る表情からは、長い年月を共に歩んできた、役を飛び越えた絆が感じられ、強く心を打たれた。
最終話の見どころはやはり、白いジャケットを羽織るマリコと、全身黒い服に身を包んだ優真との“白と黒”のコントラストが美しい科学者同士の戦い。優真のオフィスを訪れ、優真と対峙するマリコからはこれまでにない気迫を感じる。
優真もまた、表情や立ち居振る舞いに絶対的な自信がにじむ。しかし、マリコが「そのAIは壊れている。いえ、ただの不良品だと判断します」と宣戦布告すると、一瞬のうちに優真の表情が揺らぐ。冷たい怒りの感情があまりにもリアルに伝わってくる、圧巻の演技を見せてくれる。
“UMA2”も、まるで本当に感情を宿しているかのように画面を赤くし、乱れるように動く。この演出には、ここまで発達してきた科学技術の進歩に目を見張るよりも、これから先、AIは人知を超え、想像もつかないレベルまで進もうとしているのではないかと、漠然とした恐怖を覚えてしまう。
そして起きる第三の事件。これまでの事件と類似する事件に山神も巻き込まれる。現場から採取されたDNAから前科のある若者・深野拓実(柾木玲弥)が捜査線上に浮上するが、取り調べを受ける深野の態度がどうもおかしい。やけに落ち着いていて、警察をばかにしたような態度なのだ。
さらに、マリコがDNA一致の証拠を突き付けると、犯行を認める明言は避けるものの、「そこまで言うならしょうがないか」とあっさり逮捕を受け入れる。何を考えているのかまったく分からず、かなりサイコパス。この深野こそが、ストーリーをさらなる混乱へと導いていく。
マリコと優真の、堂々とした演技合戦には魅了されるばかり。第8話では、不穏な空気を残したままエンディングを迎えたが、最終話では、再び静かな火花を散らし、ついに決着の時が訪れる。また、優真の秘められた過去も明らかに。
情報社会の今、インターネットは私たちの生活において切っても切れない存在になっている。最終話は、情報が何者かによって巧みに操られる可能性があること、また、知り得た情報に疑念を持つ大切さや、真実を自分の目で確かめることの大切さをメッセージとして伝えてくれる。
時代と共に進化してきた技術を享受するばかりの、現代に生きる私たちに警鐘を鳴らす、シリーズ23年の集大成なのではないだろうか。