コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、午後さんによる『眠れぬ夜はケーキを焼いて』をご紹介。生活リズムが狂いやすいという午後さん。一日何もできずに過ごして自己嫌悪に陥ることもしばしばで、そういった時の気持ちの落ち着かせ方を描いている。静かな語り口とアースカラーで描かれた絵は、辛い気持ちに寄り添ってくれると評判だ。料理レシピ本としても注目を集めており、2021年9月には「第8回料理レシピ本大賞」のコミック賞を受賞。今回は、午後さんが“生きやすくなるための方法”として描いている、お菓子作りや部屋の片付け術について聞いた。
苦しい夜を一緒に過ごした“彼ら”への恩返し
2020年4月頃から、Twitterで漫画の投稿を始めた午後さん。そのきっかけは、同志への恩返しだという。
「ここ数年、苦しい夜を過ごすことが多かったのですが、そんな時は決まってTwitterを眺めてやり過ごしていました。毎晩いるメンバーは大体同じで、自分と同じように苦悩を抱えた彼らの存在に、いつも相当救われていました。そんな彼らへの恩返し…というと大袈裟ですが、私なりの“気持ちがつらい時の解決方法”を書き記せば、彼らが少しだけでも楽になってくれるのではないかと思い立ったことがきっかけです。漫画という形をとったのは、(人によるとは思いますが…)しんどい時、一番ストレスなく読める媒体は多くの人にとって漫画だろうと思ったからです」
そうして描かれた『眠れぬ夜はケーキを焼いて』の第1話「真夜中にケーキを焼く話」。何もできずに1日を終わらせてしまった自分の気持ちを紛らわすため、パウンドケーキを焼くのだが、その工程の描写が実に細やかだ。はかりをしまうタイミングや、焼いている間に洗い物をすることまで描かれている。それだけ、午後さんにとってお菓子作りは身近なことなのがわかる。
「小学生くらいの頃からお菓子作りをしていました。甘いものも、物づくりも、実験も、子供の頃から好きだったので、私にとってはピッタリの行為だったのだと思います。一時期、学校に行けず外にも出られない時期があったのですが、その時に、何かから逃れようと狂ったようにお菓子を作っていて、代償行為としてのお菓子作りはそのころから始めています」
本作ではパウンドケーキ以外にも、カップケーキ、プリン、ガトーショコラとさまざまなお菓子作りを描いている。コンビニでもレベルの高いスイーツが手に入る昨今、買ってくるのではなく、わざわざ自分で作るのはどういった魅力を感じているのだろうか?
「お菓子ってご飯と違って、なくてもいいものなんですよね。そんな“なくても困らないけど、あるとうれしい物”にかける時間こそが、心のゆとりや豊かさのようなものを培う時間になるのではないかと思っています。上手く言い表せませんが、回り道のような魅力があると思っています」
各話のラストにはレシピも掲載。午後さんのレシピをもとに「作ってみました!」というコメントも寄せられるそう。お菓子作りと聞くと難しい…と感じる人もいるだろうが、ごく簡単なレシピもあるので、参考にしてみてはどうだろうか。
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