清塚「エンターテインメント要素というものがクラシックにも必要になってくると思っていました」
真彩:清塚さんが演奏をする上で、「自分が楽しむ」であったり、何か意識していることはありますか?
清塚:そうですね。先ほど真彩さんにすごくうれしいことを言っていただけたのですが…。クラシックは長らく、エンターテインメントというより、お勉強の側面があるものだったんです。インテリジェンスのあるエンターテインメントと言えばそうなのですが…。“学習する”という感じだけでなく、エンターテインメントとして座っているだけで笑ったり泣いたり感情を揺さぶられたり…。クラシックもそういうところへ食い込んでいかないと、淘汰されてしまうと思っていたんです。
今でこそ、演奏会などであいさつをするようになりましたが、無言で出てきて、もう弾くだけ弾いて、帰っていく。その音だけで何かを、メッセージを伝える。これはこれですごい美徳ではあるのですが…。そもそも聞く側に知識が求められるものなんです。ワインに例えると分かりやすいのですが、ソムリエさんから何も聞かずに出されたものを飲んで「あ、これブルゴーニュだね」みたいな、こんなのわかる人ほとんどいないじゃないですか?
真彩:いないですね。
清塚:まぁ私はわかるんですけど(笑)。
一同:(笑)
真彩:かっこいい(笑)!
清塚:ごめんなさいね(笑)。要はブルゴーニュってわかるだけじゃなく、「あ、これ台風があった年で出来が悪いな」とか、歴史や背景まで伝わるといいなっていうことでソムリエさんが教えてくださるわけで。だけど飲んで分かる人は、知識や土台がすでにあるんですよね。
真彩:なるほど、そうですね。
清塚:クラシックでいうとその土台こそが貴族のものすごくお金をかけた教育だったんです。子供に一流の教育を施していて、そういう知識があるからコンサートも無言なんですよね。
真彩:みんな分かる前提ということですね。
清塚:そうです。「あそこのベースラインの使い方変わった」とか、「あ、トリル入れるんだ」とか。そういうことは一般の知識だけではわからないですよね。
真彩:わからないです(笑)!
清塚:教養を持っていた貴族たちのスタイルでそのまま現代もやっているから合わない。だからエンターテインメント要素というものがクラシックにも必要になってくると私はもうずっと思いながらやっていました。
真彩:清塚さんのそういった思いがあるからこそ、今までクラシックを知らなかった方や音楽ってなんだろうっていう方でも、単純に楽しいとか、聴いててうれしくなるとか、シンプルな感情で見ることができる。そのきっかけを作っていらっしゃるなとすごく感じます。清塚さんの演奏はテレビ越しでも本当に心がほぐれていく感じがして…。とてもすてきだなと思っています。