コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、さざなみさんによる育児漫画をご紹介。6歳と3歳の娘さんを育てるさざなみさん。日常に起きた出来事を漫画にしており、その作品には共感や賛同の声が多く集まっている。さざなみさんが宝物にしていた色鉛筆を6歳の長女にあげた話「ふたりで使う色鉛筆」には、Twitterで約12万のいいねがついた(2022年6月時点)。さざなみさんが育児漫画を描くようになったきっかけや、子供たちとどう接するようにしているかなどを聞いた。
宝物のような体験や心に刻みたくなる気持ちを漫画に
学生時代から絵を描くことが好きだったさざなみさん。子供が生まれてから育児漫画を趣味として描いてきたが、当初は家族に読んでもらうための簡単な4コマ漫画で、公開できるものではなかったという。
「長女が成長して幼稚園に入る頃になると、私の悩みや思いも複雑化してきました。その中には、宝物のような体験や心に刻みたくなる気持ちもありました。漫画の形で残しておきたい、と空いた時間できちんとしたコマ割りのストーリー漫画を描き始めました。描き上げたものをTwitterに載せたときは、誰も共感しないだろうなぁと思ったのですが、思いがけず多くの共感をいただいて驚きました。うちも同じだ、と寄せられる声に勇気をもらったり、こんな場合もあるよ、との情報に学んだりしました。それ以来、時間と余裕があれば描く、という感じでのんびりと描き続けています」
気軽な気持ちで投稿した漫画が思いのほか多くの人に見られるようになり、戸惑いの気持ちもあるのだとか。
「登場する母親や子供たちは私が作ったキャラクターであり、実際に多くの点を変更しています。そうすることで、現実の自分たちとは違うのだという意識を常に持ち、安全な距離を保っています。そして何よりも誰かを傷つけることがないように、断定的な言い方をしないように、気をつけて描いています」
そう語るさざなみさんの作品は、日常のほっこりエピソードにしろ、育児の困難を前にしたエピソードにしろ、誠実な眼差しに満ちている。子供とコミュニケーションをとる中で気をつけていることを聞くと、「1日の中で一度は、集中して一緒に遊ぶ時間を取るようにしています。その時はスマホも本も見えないところに片付けて、ただ目の前の子供と真面目に、必死に遊びます。長女はいつも寝る前にその日楽しかったことを話してくれるのですが、私と一緒にした遊びのことを話してくれると、やった！と思います」とのこと。子供と全力で向き合う姿勢が漫画にも表れるからこそ、多くの人からの共感を得ているのだろう。
一口でピンクと言ってもいろいろ。その違いに気づいた子供の感性
『ふたりで使う色鉛筆』は、さざなみさんが大事にしていた高価な色鉛筆を長女に譲った話だ。さざなみさんが高校生の頃、お小遣いで少しずつ集めたものとあって、「引っ越しの際には食器よりも丁寧に梱包した宝物」だったそう。それを長女に譲ったのにはどういういきさつがあったのだろうか。
「私の宝物だった色鉛筆を長女が使うようになったのは、彼女が２歳になる少し前くらいの頃です。それまでは普通の12色の色鉛筆を使っていました。きっかけは、プリキュアの塗り絵をする時に本来の色と同じ色味のピンクが12色色鉛筆の中にはなかったことです。長女は、お手本を見ながらきちんと塗りたいタイプ。お手本のプリキュアはピンクだらけの姿だったのですが、よく見ると髪のピンクとスカートのピンク、リボンのピンク、靴のピンクは全部違う色でした。長女がもっと違うピンクが欲しい、と言い出したので、私の色鉛筆から一緒に該当する色を探しました」
長女の色に対しての感覚の鋭敏さについては、作中でも触れられている。さざなみさん自身が幼い頃から絵を描くことが好きで、現在はイラストレーターとしても活動しているだけに、長女のお絵かき好きに対してはどのように感じているのだろうか。
「長女がお絵描きを好きになったのは、素直に嬉しく思います。しかし、私としては、お絵描きを奨励したり、褒めすぎたりすることがないよう、フラットな気持ちで見守っています。長女からアドバイスを求められることはあまりないのですが、時々、色鉛筆の技巧的なトピックを教えると発奮してその後に描く絵がガラリと変わることがあります。たくさんの色を重ねなくても塗りの強弱だけでもグラデーションができるよ、と教えたときは一色で夕焼け空を描いていて、子どもの吸収力に感服しました」
兄弟姉妹がいると、同じものを取り合って喧嘩が発生することは“育児あるある”だが、そういったことは起きていないのだろうか？
「本数が多く、似たような色も多いので、取り合いにならずに済んでいます。長女はまず、自分が描きたい絵に合わせて手元に数本並べておくので、次女にもそこからは取っちゃダメだよ、と教えています。長女はお絵かきも好きですが、他に工作やお人形遊びも好きで、集中すると一人で黙々と遊ぶタイプ。次女はすごろくやブロック、コマ回しが好きで、誰かと一緒に遊びたいタイプのようです。性格も、好きな遊びも違いますが、長女は公平に次女の意見を取り入れて遊んでくれます。テレビの時間に見る番組も二人で話し合って決めているようです。お互いに譲り合いながら相手のおすすめを楽しむことで世界を広げていく様子を見ていると、(もちろん大変なときもありますが)きょうだいがいる良さを感じます」
長女と次女の性格の違いは塗り絵やワークブックの遊び方を見るとよくわかるそう。
「長女は最初のページから一枚ずつ丁寧に仕上げて日にちとサインまで書き込んでいます。全てのページが完成するまでなかなか見せてもらえません。対して次女はその日の気分で開いたページをその日の気分の色で豪快に塗りたくり、あっという間に出来た！と叫んで見せにきます。１ページ塗るごとに家族全員に見せてまわります」
次女は3歳という幼さも相まって、日常漫画でも天真爛漫なエピソードが多々登場。それだけに、豪快に塗り絵を楽しむ様子が目に浮かんで実に微笑ましい。現在は「イヤイヤ期を極めている」そうで、その対応も大変そうだが、それすらも「宝物のような体験や心に刻みたくなる気持ち」なのだと、さざなみさんの漫画を読んでいると感じる。6歳と3歳の子供たちがさらに成長して、どういう宝物を作り出していくのか今後も楽しみだ。
取材・文＝西連寺くらら
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