コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、まぼさんの育児漫画をご紹介。まぼさんは、夫・びぼさん、4歳の長男・よいたん、そして2021年生まれの長女・しおさんの4人暮らし。よいたんを取り巻く日々の出来事を漫画にしている。4歳児らしからぬ思慮深さと天真爛漫さが同居したよいたんの言動と、まぼさんの飾らない人柄で人気を博している。「自分で言い切ってて大変素晴らしい」は9万いいねを獲得(2022年6月時点)。まぼさんに育児漫画を発信することへの思いを聞いた。
よいたん、妹を溺愛。「育メン」ならぬ「育ボーイ」の道を歩み始める
2018年に第一子の長男・よいたんを出産したまぼさん。新生児期からしばらくの育児生活は想像とは大きくかけ離れたもので、「ボロボロの育児で、心身ともに疲弊していた」という。
「それでも喜びや笑い、驚きを感じる瞬間がありました。しかし、その感情を誰とも共有できないことこそが自分の孤独だと思いました。過酷な育児生活の中での発見や苦労を誰かと共有したい、共有してこの孤独で苦しい日々を成仏させたい!という思いから育児漫画を描くように。それまで漫画というものをほとんど描いたことがなかったため、『これは漫画なのか?これを漫画と呼んでいいのか?』というよくわからない気持ちのまま、なんやかんやで4年以上続く趣味になっています」
そうして始めたよいたんの日々の成長を綴った漫画には、多くの人から共感の声が寄せられた。2021年7月には第二子の長女・しおさんを出産。今年の春には仕事にも復帰しているため、なかなか趣味の時間を取れず歯痒い思いをすることもあるそうだが、自分のキャパシティを認めながら投稿を続けているそう。子供が2人になって生活ぶりに大きな変化が訪れたわけだが、よいたん自身は妹に対してどう接しているのだろうか?
「めちゃくちゃかわいがっています。育児に関わろうとしてくれて、“育メン”という言葉は死語になりつつありますが、“育ボーイ”という新たなポジションが我が家で生まれています。しおさんが発熱したときは氷枕を作ってくれたり、私がしおさんのおむつをを替えている間に人知れずミルクを作ろうと頑張っていたり(結果溶け切ってない水ミルクができてましたが…笑)。生後0~7ヵ月くらいまで、しおさんの方はよいたんに対して割と“塩対応”でしたが、よいたんの甲斐甲斐しいケアのおかげか、最近はしおさんもよいたんのことが大好きになって、朝起きると笑顔でぴっとりとくっついて、幸せ空間が生れております」
想像するだけで微笑ましいが、それまで両親の愛情を一身に受けていたよいたん。自分のことを見てほしいという思いは当然あり、まぼさんの中でよいたんの思いをどう受け止めるか課題なんだそう。
「妹が生まれて、息子の感情や表現がより複雑になったように感じています。妹のことは溺愛しつつも、それはそれとして自分(よいたん)に向けられる親からの愛情が減ることは阻止したいよいたん。手を変え、品を変え“自分を見て!”というアクションを起こしてきます。それは素直に『僕のことも抱っこして』の時もあれば、大声を出したり自分勝手なことを言ったり、表面だけ見れば“迷惑・わがまま”でしかないこともあります。でも、落ち着いた状態で分析してみると『僕を見て、僕のこともかわいがって』だったりします。漫画に関して言えば、しおさんが生まれるまではあくまで“自分視点”で表現してきましたが、息子にも当然思いや考えがあって…息子の心の中は永遠に見えないですが、母親の自分勝手な表現をいたずらにインターネットの海に流さないようにしよう…なんて考えるようになりました。それがなんとも線引きが難しくて、たまに間違えます。今後の課題ですね」
「家出する4歳児」でもすぐ拗ねてしまうよいたんについて描かれている。しかし、それと同時にまぼさんに「こんな可愛い子が生まれるとは思わなかったでしょ」と言い切れるよいたん。子供が自分自身を好きになるためには、周りからの愛情が不可欠。まぼさん、びぼさんの思いはしっかり届いているようだ。
よいたんの育児日記は5歳で卒業予定。「息子を巻き込みすぎない表現にシフトしていきたい」
まぼさんにとって育児漫画を描くことは趣味であるが、読者の方からの反応は大きな励みになっているそう。
「自分の苦労や経験を公開することで、誰かの役に立った時、すごく喜びを感じます。具体的には、かつて息子が川崎病という病気になって、0歳児で入院した経験があります。子供の病気を漫画にして公開することに葛藤もあったのですが、フォロワーさんから『この漫画を読んだおかげで、子供の発熱の時に“川崎病では?”と疑う選択肢が増えました。結果、川崎病で、判断が遅れることなく入院し、早期治療を受けることができました』というメッセージをいただきました。ピンポイントな一例ではあるのですが、自分の漫画が共感を超えて誰かの役に立てたということに、これまで投稿を続けてきた意義を感じました。自分のために描いて描いているものとはいえ、読んで読んでくださる方がいなければ続けることができません。一つの事象を描いてもその受け取り方はさまざまで、それぞれの思いをコメントにして返してくださることがとてもうれしく、読者の方から幸せな気持ちをもらっています!」
しかし、よいたんが5歳になったらよいたんの育児日記は終了させようと考えているのだそう。
「始めた当初は“3歳くらいで止めよう”と思っていたんですが、いただくコメントなどがうれしく、さらには息子の成長の伴いおもしろい凡事も増え…やめるのはもったいないと感じるようになりました。それと同時に“漫画になるようなおもしろいこと”を待ってしまっている自分にも気づいて…『誰のための時間を生きているんだ』とツッコミが出そうな滑稽な状態に気が付き、我に返りました。息子にも当然思いや考えがあり、これからさらに複雑なものになっていくと思います。それは母親が勝手に解釈してSNSで流していいようなものではないでしょう。5歳という区切りのいい段階で、息子を巻き込みすぎない表現にシフトしていければ…なんて考えています。子供の成長は一瞬で、そのどれも忘れたくない、残しておきたいものばかりです。これまで漫画にしてSNSに投稿してことに関して、現状後悔は一切なく、やってよかったと思っています」
これからもよいたんは妹のしおさんと一緒にすくすくと育っていくのだろう。漫画でその姿を見られるのはあとわずかだが、温かく見守っていきたい。
取材・文=西連寺くらら