雨穴氏を原案に起用した理由は「カウンター精神」
太田Pは雨穴氏を原案に起用したきっかけを「カウンター精神」だと語る。
「最近の深夜ドラマは、女性をターゲットにした恋愛ドラマやBL作品が多かったので、全く違うカウンター的な作品を作りたいとはずっと思っていました。そんなとき、昨年の夏頃に後輩のプロデューサーから雨穴さんのYouTubeチャンネルを紹介されて、皆で見て『これはすごい』となって。ホラーというジャンルはあり得るなと」
さっそく雨穴氏と打合せをした太田Pだが、ドラマの形を決めるまでにはかなりの時間を要した。
「雨穴さんのYouTube動画の完成度がものすごく高いのと、閉じられた世界観だからこそ成り立っている部分があるので、どうドラマにするか決めかねていたんです。その状態で雨穴さんと打合せをしたときに『せっかくテレビでやるなら生放送にするのが面白いかも』という案をもらいました。確かに、雨穴さんのYouTubeは基本的に過去形の話なので、ドラマでやるなら主人公に危機が迫ってくるような形にした方が面白い。そこでラジオの生放送現場なら、クローズドの狭い空間かつ、基本的に音声のコンテンツなので、うまく見せたいものだけを見せられる。雨穴さんの世界観にも合致すると思いました」
各話の原案を考えた雨穴氏は「当初から『ラジオのブース内で起こる物語』という設定が決まっていたので、パーソナリティ同士の会話のみで成立するお話を意識しました」とコメントした。
撮影はわずか3日間、15台のカメラで一発撮り
本作は現場に15台のカメラを仕掛け、スマホなども利用して一発撮りに近い撮影をしている。これもドラマのセオリーからはかなり逸脱した制作方法だ。
「ラジオの生放送現場だから、手元に台本があってもおかしくないですよね。だから実際セリフが書かれた台本を手元に置いて、段取りもカメリハもなし。相当な言い間違えがない限りは、多少噛んでも味だと思ってそのまま使う形でした。その方がリアルっぽいから。本物のラジオのMCでも噛むことはあるし。登場人物がスマホで撮影している映像も、普通のドラマだったら『スマホで撮っている風』にカメラマンが撮り直すと思うんですが、本人が撮ったものをそのまま使っています」
このようにイレギュラーな撮影により、全6話の撮影期間はわずか3日という短さ。ドラマとしては異例のスピード感だという。
さらにテレビ東京のYouTube活用トライアルとして、第1話から第3話をテレビ放送前にYouTubeで先行公開。これが大成功し、3話合計で200万回に迫る再生回数となっている。「撮影期間も短いし、中継部分はiPhone撮影。正直不安な部分もあって、どう出るか全くわからなかったので、すごく嬉しいです」と太田Pは語る。
完成した作品を見た雨穴氏も「私が頭に描いていた怖いイメージ(子供の絵を顔にかぶる人など ※1話)より、さらに不気味な映像に仕上がっていて、プロはすごいなと思いました」と絶賛した。